カテゴリー「音楽」の1000件の記事

2025.02.12

『東京音頭』を唄った三嶋一聲は20世紀の浦島太郎?

Mishima01 定変更で東京で一日過ごしました。昨日紹介した「226」の舞台の一つである山王ホテル(現山王パークタワー)に行ってきました。そのあと龍土軒へ。89年前の今日、龍土軒で青年将校たちの会議が行われました。

 いろいろ思うことがあります。そして来月、物語の続きがある予定です。また信じられないご縁がありました。報告できる時がいつか来ると思います。

 さて、出口王仁三郎と二・二六事件の関係、そしてそこにまつわる未来の原因についても中級編でお話いたしますが、映画の中でも歌われていた「東京音頭」(今ではヤクルトスワローズの応援歌として有名ですね)の歌手三嶋一聲と出口王仁三郎との関係も実に面白いのです。

 私はその事実に全く無知でしたが、王仁三郎関係の友人がたまたま立ち寄った浦嶋神社でこの本で出会い教えてもらってびっくり仰天。

 そう、この本の中に驚愕の事実が書かれていたのです。大正13年、第一次大本事件で仮釈放中の王仁三郎は植芝盛平らとモンゴルへ旅立ちます(チンギス・ハーンとしてエルサレムを目指した!?)。

Th_unnamed_20201206090601_20250213105301 結果、張作霖によって捕らえられ銃殺刑が決まります(パインタラの法難)。まさに処刑が執行されようという時、すべての機関銃が故障した…と大本では言われていますが、実際はたまたま中国にいた三嶋がいろいろと画策して命拾いしたと、この本には書かれているのです。

 この三嶋一聲という人、まあとんでもない人で、この本に書かれたことが事実なら、ぜひ大河ドラマにしていただきたい。なにしろ絵画の勉強にフランスに行ったのはいいが、お金がなくなって「歩いて」(!)日本に帰ってきたのです(もちろん最後は船に乗りますが)。その途上、たまたま(運命的に)王仁三郎一行と出会うのです。まあとにかくしたたかで勘が強い。コミュ力抜群で楽天家。スケールが違う人です。

 日本に戻ってからもいろいろ事業をやったりして、なぜか流行歌手になっていくのです。波乱万丈とか、そういうレベルの話ではありません(笑)。

 いやあ本当にこの本面白かった。ぜひ一般発売していただきたいですね。そしてドラマ化、映画化していただきたい。

Amazon 『東京音頭』を唄った三嶋一聲は20世紀の浦島太郎?

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2025.02.09

S.L.ヴァイス 『パッサカリア ニ長調』

 

 ロック期の作曲家の中でも、最も耳あたりのよい曲をたくさん作ったのは、このヴァイスかもしれません。

 リュート奏者として有名で、かの大バッハとも親交のあったヴァイス。非常に多くのリュート作品を残しています。その数850とも言われています。

 私が聴いてきたのはそのうちの1割程度かと思いますが、そのいずれもがリュート特有の繊細で優しい音色にふさわしいエレガントな音楽です。

 特に彼が用いるコード進行やメロディーは、のちのポピュラー音楽にも採用されるような大衆性と普遍性を持っており、じっくり聴くのもいいのですが、いわゆるBGMとして流すにも最適な音楽です。

 たとえばこの比較的有名なパッサカリアは、よくある低音の下降進行を基本としながら、さっそく2小節目の冒頭にちょっと特殊な和音を使っていますね。D→A/C#という進行の間に経過和音としてE/Dを挟んでいる、つまりすぐに5度上に転調させているんですね。

 これも20世紀のポピュラー音楽で時々聞かれるオルタナティヴなコード進行です(と言いつつ、このコード進行を使った現代の曲が思い出せない。好きな曲のはずなのに全然思い浮かばない…もどかしい!)。逆に言えば、バロック時代にはほとんど聞かれない不思議なコード進行。

 続く変奏部分では、その特殊な色合いがだんだん希薄になってゆき、そして最後にテーマが戻ってきて再び明確になる。この感じが絶妙ですね。

 そしてこの演奏では最後に即興カデンツを入れることによって、さらにもう一歩先に行っていてよろしい。決してやり過ぎにならず、ヴァイスが現代に生きいたらやりそうな響きを作っていて感心しました。

 オマケになります。ジョン・ウィリアムスによるギター演奏の貴重な動画がありました。ノイズ多めですがいい演奏です。

 

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2025.02.04

藤井風 『若者のすべて』(志村正彦)

Img_9176 京中野にてセミナー。始まる前に高円寺でちょっとした用事をすませました。

 富士吉田、高円寺と言えば志村正彦くん。もうずいぶん時間が経ってしまいましたが、彼の音楽と言葉の数々は永遠の輝き、そして若さを保っています。

 昨日も下吉田駅から富士急行線に乗って東京への帰途に着いたのですが、ちょうど上り下り両方の列車が到着したので、「茜色の夕日」と「若者のすべて」が同時にかかっていました。外国人観光客たちにはどんなふうに響いているのでしょうか。

Img_9177 「いつもの丘」もずいぶん様変わりしました。しかし、そこに「満ちる欠ける月」は変わりません。同じように時代を超えて、志村くんは私たちの魂に変わらず生き続けています。もちろん多くのミュージシャンにもそのスピリットは受け継がれています。

 最近では、やっぱり藤井風さんですかね。この「若者のすべて」の動画はちょっと前にはなりますが、いや素晴らしいカバーですよ。原曲の良さ、志村くんのスピリットを大切にしつつ、ちょっとしたオルタナ・コードの使い方など絶妙です。

 

 

Img_4316_20250206193401 きっと志村くんも喜んでくれていることでしょう。まさに永遠の名曲。そのうち世界に飛び立っていくに違いありません。

 私もあの日の、鹿ちゃんのような細かく震える彼の目を忘れることはありません。

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2024.08.12

ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』

Meets 々に富士山の家に帰ってきましたよ。と言っても、秋田から甥っ子、姪っ子たちが来訪し、それなりに忙しくしております。

 さて、パリオリンピックが終わりましたね。フランスだけではありませんが、ヨーロッパの国々は黒人の選手が多かった。もちろん歴史的なことを考えればそれはしかたないことです。

 18世紀のフランスが「未開な国々」をどう見ていたかがわかるオペラ・バレエがあります。ラモーの「優雅なインドの国々」です。当時のフランス人の感覚については、世界史的な勉強が不足しているので、あまり正確なことは言えませんが、少なくとも「インド」という言葉が、今のインドではなく、アジア、アメリカ大陸やアフリカ大陸まで含めた「ヨーロッパ以外」を指していたことはわかります。

 バレエに登場するのは、トルコ人、インカ人、ペルシャ人、そしてアメリカ・インディアン。それぞれ決して見下したり、バカにしたりするわけではなく、まさに異国情緒の対象として、異文化として描いているように感じます。特にトルコ人には忖度しているような(笑)。

 さて、この大作の中でも特に有名なのが、アメリカ・インディアンを描いた第4幕「未開人たち」の中の「未開人の踊り」でしょう。

 これを見事に現代的に表現した動画があります。演奏はバロック様式ですが、踊りはヒップホップなどのストリート・ダンスです。これがなかなか素晴らしい。今や「未開人たち」はヨーロッパにとって憧れの対象にすらなっているわけですから、時代は変わったものです。

 

 

 あと、この名曲を現代に蘇らせたといえば、このドミトリー・イヴァンチェイのロックな演奏でしょう。全パート自分で演奏、歌唱しています。

 もともとはヴァイオリンで音楽大学に行っていましたが、今はオペラの歌手として活躍しています。すごいですね。ユーモアも抜群です(笑)。いろいろなヅラをかぶって頑張っています。エレキ・ヴァイオリンもかっこいい!

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2024.07.23

ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』

20240725-210433 岡での新任教員の研修指導が終わり、山梨に戻ってすぐに東京へ。明日から東北・北海道ツアーです。

 東京へは大月から特急かいじを利用します。かつては特急料金をケチって普通列車で行き来していましたが、今はチケットレス割引も充実しているので、あの快適さと早さとのコスパを考えて特急に乗るようになりました。

 その特急かいじの中で聴いたアルバムがこれ。いや、これいいわ!

 イタリアを代表するソプラノ歌手、ロベルタ・マメーリさんのジャズ・アルバム(?)。得意のモンテヴェルディを中心に、初期イタリア・バロックの歌曲をまさかのジャズ・アレンジで歌っています。

 とはいえ、歌はほとんど楽譜どおり。演奏がジャズ・ミュージシャンによるジャズ・スタイルなのですが、これが妙にマッチしている。バッハをジャズにするような取り組みは昔からたくさんあり、それはそれで一つのジャンルと言ってもいいくらい洗練されてきましたよ。

 しかし、まさかモンテヴェルディがこんなにジャズしているとは!

 もともと即興性が高く、またメリスマも効いているイタリア・バロック歌曲でありますから、たしかにジャズとの親和性は高いはずですよね。それにしてもここまでしっくりくるとは。

 2010年の録音ですか。ちょうどこの頃、私マメーリさんといろいろ遊んでいた時期だ。演歌を歌わせたりしてたっけ(笑)。そう、都留音楽祭の講師として何年か来日していて、宴会芸などで遊んでいたのです。

 もしかしてその時の経験が…まあ、それはないかもしれませんが、とにかく型にはまらない素晴らしいアーティストであったことはたしかです。

 その後の活躍も言うまでもありません。考えてみるとすごい人たちと遊んでたなあ、あの頃は。

 いやそれにしても、妙にいいぞ。このアルバム。

'Round M - Monteverdi meets jazz |Roberta Mameli, soprano
La Venexiana|Claudio Cavina

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2024.07.21

まなびの杜(富士河口湖町)

Img_6580 士河口湖町にある「まなびの杜」にてイベントに参加しました。

 尊敬する木工作家吉野崇裕さんが展開している「森と木から学ぶ」事業の中心基地「まなびの杜」。4000坪の山林を買い取り、築100年近い古民家を埼玉から移築して始めたこの取り組み、日本のみならず世界中の多くの人たちから賛同を得て、着実に「まなび」を受容、発信しています。

 なにより吉野さんの哲学が素晴らしい。御本人も自分の意思というより、なにものかに動かされているとおっしゃっていましたが、たしかにこれは「神仕事」ですね。

 今日はそのまなびの杜のツアーとコンサート、そしておいしいケーキと飲み物を同時に楽しめるという贅沢な企画でした。

 コンサートは友人もあり不思議なご縁でつながっている伊藤愛子さんのピアノ演奏。久しぶりにモダン・ピアノのコンサートを聴きましたが、とにかく古民家自体がよく鳴っていてびっくりしました。

 小型のグランドピアノでしたが、建物が一つのグランドな共鳴体となっていて、ああなるほど楽器とはまさに空間との融合体なのだなと思いました。

 バッハからドビュッシーまで、選曲も演奏も実に私好みであり、また山や森や月も含めた空間の素晴らしさも相まって、本当に久しぶりに音楽で小旅行を楽しめたひとときとなりました。

Img_6574 ツアーでは世界一と言って良い椅子のコレクションである「椅子の学び舎」も吉野さんの解説つきで見学。いやあ、実に面白かった!椅子という古典的な家具、道具が、材質の発明と進化を経て、人間の創造力や想像力をかきたて、そして生活を変えてきたことを実感できました。これぞ「デザイン」ですよね。

 仲小路彰の弟子の一人であった建築家の坂倉準三の作品もありました。そして坂倉さんの師匠であるコルビュジエの名作も!

 建築家がこぞって椅子に挑戦するのも面白い現象ですよね。

 またゆっくり訪問して、いろいろ学びたいと思っています。よろしかったら皆様もご一緒にぜひ。

 詳細はHPをご覧ください。

 まなびの杜 公式

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2024.07.20

リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』

Jacketjpg 宿も無事終了いたしました。今回も皆さん素晴らしい方々で、私も皆様の笑顔に元気をいただきました。ありがとうございました。

 今回はあまり仲小路彰について語る時間がありませんでした。仲小路の残した文化の一つに音楽がありますが、最近あの時代の素晴らしいアルバムが発売されましたので紹介します。

 間接的というか、ほとんど直接的に仲小路の影響を受けている川添象郎さんや村井邦彦さんが創始したアルファレコードから発売されるはずだった、リンダ・キャリエールの幻のデビュー・アルバム。これまた仲小路からの影響を受けた細野晴臣さんがプロデュース。

 収録曲を見てください。この作家陣!!

 【収録曲】
01. Up On His Luck(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:山下達郎)
02. Loving Makes It So(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:吉田美奈子)
03. Sunday Girl(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣)
04. All That Bad(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣)
05. Proud Soul(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:吉田美奈子)
06. Laid Back Mad Or Mellow(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:矢野顕子)
07. Child On An Angel's Arm(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣)
08. Vertigo(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:佐藤博)
09. Love Celebration(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:山下達郎)
10. Socrates(作詞:ジェームス・レイガン 作曲:細野晴臣)

 いろいろあってお蔵入りになっていたわけですが、あえて47年後に封印を解かれるように仕組まれていたのかもしれませんね。

 今こそ「新しく」聞こえる音世界です。やばい。歌もすごいけれど、やっぱり演奏が…すごすぎる。生々しい。これは本当に「新しい」。

 アナログ盤も買おうかな。う〜ん、レコードで聴きたい。

 

 YouTubeで聴けるのは2曲。作曲・アレンジ細野晴臣さん。
 次は作曲吉田美奈子さん、アレンジ山下達郎さん。

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2024.07.19

グラウプナーのシャコンヌニ長調

 日明日と富士山合宿。今回も全国から多くの方が参加してくださっています。

 というわけで、とっても忙しくしておりますので、今日も音楽を紹介いたします。

 最近はまっているバロック時代の作曲家グラウプナーのシャコンヌです。彼はテレマン並みに多作家であり、シャコンヌもたくさん作っているのですが、今朝聴いたこの曲はとてもキャッチーでいい曲ですよ。

 コテコテと言えばコテコテですが、それがいいのです。コテコテは時代を超えます。

 楽譜はこちらの65ページです。45小節のラの#がナウい(笑)。終わり方もあっさりでいいですね。

 

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2024.07.12

ジョン・ラター指揮 『フォーレ レクイエム』

20240713-85448 日は横浜でセミナーでした。因縁の地(?)横浜での開催ということで気合いが入りすぎ、時間が足りませんでした。

 横浜の大学に見事に落ちシティ・ボーイになれず、山梨のカントリー・ボーイになった私ですが、そこで出会った様々なモノたちが今のワタクシを作り上げております。そういう話も最後にいたしました。

 そんなモノの中の一つが音楽。まさかの山梨の地で古楽祭の中心人物になっていくとは。信じられませんね。そこからの素晴らしいご縁のおかげで今の音楽活動があります。

 古楽の流れの中で出会ったオリジナル主義と少人数主義、純正調へのアプローチ、ノンビブラート演奏などは、古典派以降の音楽にも応用されていきます。

 この純粋なフォーレのレクイエムについても、20年前(!)にこのブログで紹介しています(こちら)。

 昨日のビートルズ協奏曲の作曲家、ラターが指揮したこの演奏は今でもベスト盤です。古楽演奏の影響を受けた清澄な響き。美しい。自分の葬式にもこれをかけてもらいます。

 

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2024.07.11

John Rutter 『Beatles Concerto for two pianos and orchestra』

20240713-84635 日も東京でセミナー。90人の方の前で熱弁いたしました。盛り上がる盛り上がる。若い人たちに話しを聴いてもらえて幸せです。

 さて、忙しいので音楽ネタが多くなります。移動中や作業中に音楽を聴くことが多くなるからとも言えますね。

 一昨日、昨日とビートルズからのジョシュア・リフキンの音楽を紹介しました。今日もビートルズからクラシックの作曲家・指揮者・研究者のネタに行きます。

 イギリスを代表する合唱音楽の巨匠ジョン・ラターが作曲した「2台のピアノとオーケストラのためのビートルズ協奏曲」です。これもまた良い曲なのです。こちらは王道と言えば王道ですね。

 合唱音楽の巨匠もきっと母国が誇るビートルズの「歌」を認めているのでしょう。その美しい旋律を見事に生かしたアレンジというか作曲術を聴かせてくれます。

 こうして聴きますと、やはりビートルズが英国のフォークソング(歴史的に見て多様性に満ちている)と、のちのヨーロッパ古典音楽の作法、そしてロックという当時最先端の音楽が融合した産物であることがよくわかりますね。

 もうこういうバンド、音楽家集団は現れないでしょう。

 

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