カテゴリー「音楽」の910件の記事

2012.02.06

キース・エマーソン・バンド 『Moscow(DVD)』

Keith Emerson Band
51kxwgjld9l 人から「これを観ないでは死ねない」と言われ購入したDVD。たしかにこれはすごい。これが1000円そこそこで手に入るなんて、まあなんと幸せな時代なのでしょう。
 ちょうどこの前、エマーソン・レイク&パーマー 『 Live in Japan(1972年後楽園球場)』を紹介しましたね。あれはあれで若かりし頃のキース・エマーソンの素晴らしいパフォーマンスだったと思いますが、やはりこちらの方が数段ステージが上ですね。
 昨日の「禅」の話じゃないですけれど、やはり究めて窮めて極めるとこういう「形」になるんだなと。表現ではなくて、本物それ自体なんですよ。誰も真似できない。
 EL&Pでないからこそ、このクオリティーだとも言えましょうか。ヴォーカル&ギターのマーク・ボニーラはじめ周りを固める「職人(弟子)」たちによってより高められたエマーソン老師という風情ですね。
 屹立する(大)Moog様が、そこに鎮座する仏像、いや曼荼羅図のように感じられたの私だけではないでしょう。ここまで来ると、もう無機物であるとか、機械であるとか、電子機器であるとか、そんなことはどうでもよくて、全てが「自然」の造物であるという感じがしてきます。
 それにしても、この「形」はすごいですね。キース・ジャレットやパット・メセニー、そしてイチローについての記事などで書いてきましたよね、「超一流は独自の形になる」と。それは一般的には「変」であり、誰も真似できないと。ここでのエマーソン老師の指使いというか手の形というか、これは「変」ですよ。鍵盤を弾く方ならお分かりになるでしょう。真似のしようがありません。
 この手さばき、指さばきは、「気」を操る領域ですね。もちろん機械を操作しているのではない。昨日の宮戸さんとの話で言えば、「合気道」の植芝盛平という感じですよ。特にテルミンに対峙した時(笑)。
 その他、もろもろのことはぜひともAmazonのレビューをご覧下さい。私なんかより彼らに詳しい方々が皆興奮して表現しています。
 探していたら、ありました!このDVDの中でも圧巻と言えるあの「LUCKY MAN」が!これを観て聴いて鳥肌が立ったなら、すぐにアマゾンでポチッとしてください。家宝になります。ちなみにリージョン・フリーのようです。日本のプレイヤーでちゃんと再生できます。

Amazon Moscow(DVD)


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2012.02.05

『迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教 』 ネルケ無方 (新潮新書)

51fvctgyxll 日の話題「方便」も出てきました。へえ〜、僧堂ではこういうのを「方便」と言うのか。
 今日は東京にてマタイ受難曲の練習。鞭打ちのシーンの付点はもっと鋭く…と言われても、仏の慈悲心からかどうしても甘くなってしまう…いやいや、単に技術がないからです(苦笑)。
 実は練習の合間にこの本を読み進んでいたのですが、まあまたまた驚きの偶然、いや必然がその後起きました。
 練習が終わって、私は高円寺に向かいました。真のプロレスリング伝導者にして、IGFの現場監督(GM)宮戸優光さんに会いに行くためです。
 大晦日の「元気ですか!! 大晦日!! 2011」や2.17の興行のこともいろいろお聞きしたかったし、昨年はいろいろプライベートでもお世話になっていたので、お礼かたがたいろいろお話をしようと思っていました。
 私たち二人が話を始めると、ちょっと不思議な雰囲気になります。おそらく周囲の人たちはついてこられない世界ではないでしょうか(笑)。すなわち、プロレスや教育の話をするのですが、それが非常に「禅」的な内容とスケールになっていくのです。
 そして、なんとも摩訶不思議なことに、私は何も言っていないのに、宮戸さんの方からこの本の話が出たのには驚きました。それ、まさに今日読んでいる本ですよ!もうこれは偶然ではないですよね。あまりにマニアックにピンポイントすぎます。仏縁でしょう。
 いやあ、本当に宮戸さんは私にとって、アントニオ猪木という神(仏?老師?怪物?)の良き右腕としてのみならず、一人間として尊敬すべきプロレスラーであり指導者であり、そして、これはおこがましいかもしれませんが、良き修行仲間という感じがするのです。
 なかなか言葉では説明できませんが、互いに「仕事」や「鍛錬」を通じて、共通する「何か」の存在を予感し、いや確信しているんですね。そこに大きな共感があるんです。
 だから、今日のような不思議なシンクロが生まれるのでしょう。
 正確にいうと、この本が直接出てきたのではなく、この本で紹介されているオイゲン・ヘリゲル著「弓と禅」の話から、この本の話になったのです。まさに今日のお昼にその「弓と禅」が紹介されているところを読んで、私自身も「ああ、そう言えば『弓と禅』読んでないな」と思った矢先だったので驚いたというわけです。
 さて、そんなわけで、帰宅してからまずはこの本を一気に読み終えました。ものすごいスピードで読めたのは、宮戸さんとの会話のおかげで、この本に書かれている内容の理解が…いや理解ではないな…腑に落ち方が尋常ではなかったからです。
 これぞまさに「師匠」の力であり、「縁起」そのものでありましょう。ありがたいことです。
 そういう意味も含めまして、この本、今まで読んだどんな禅に関する本よりも、すうっと心に、いや体に入って来ましたね。「私が座禅するのではなく、座禅が座禅するのだ」…この境地は予感できます。いや、理屈や言葉によらずに「確信」できます。
 ネルケさん、いや無方禅師の、その境地まで至る過程もまたよく分かるものでした。
 私もかなり徹底した「野狐禅」「野狸禅」の実践者でして、最近ではいろいろな老師様とお話する機会をもいただいております。普通の雲水さんではとてもお話できないような方々ですよ。野にあるからこそ可能なことです。ずうずうしいだけとも言えますがね。また、上司や同僚、教え子や友人に僧堂での経験者が多いこともありまして、日本の仏教そのもののあり方や禅の修行の問題点や奇妙なところをけっこう知っている方だと思います。
 それをドイツ人であるネルケさんが実に客観的に、そしてある意味批判的に包み隠さず書いている点(もちろん仮名が使われたり、寺名は伏せられたりしていますが)、非常に貴重な「資料」だとも言えます。なかなか内部の人、特に日本人にはこうは書けませんね。
 そういう意味では、以前紹介した「食う寝る坐る 永平寺修行記」とも一線を画していると言えます。かの著者は日本人でしたし、僧侶になったわけではありませんから。
 「禅」に興味がある方はもちろん、東西の比較文化論に興味がある人、あるいは「迷える者」たちにもぜひ読んでもらいたい本です。
 最後に道元禅師による「現成公案」の一部を、著者が現代語訳したものを引用させていただきます。ここに禅のエッセンスが表されていると感じました。

 私たちの日常生活も、それをはるかに越えた宇宙全体も、様々な側面がある。しかし、私たちに見えているのはそのほんの一部分でしかない。それぞれの視野に収まる範囲の物事を見聞きし、各々が受けてきた教育や人生体験で処理しているだけだ。物事の本当のあり方が知りたければ、自分のメガネを通して物事に『◯╳』をつける以前に、物事にはこの頭で割り切れない側面のあることを理解しなければならない。周りの人々(山・川)にはまだ気づいていない徳もあろうし、自分が想像してもいない世界が他にもあるということを、よく承知していなければならない。これは他人事ではない、自分の足下の話なのだ。

Amazon 迷える者の禅修行


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2012.02.02

アンデシュ・ダンマン 『オール・ユー・ニード〜クラヴサン組曲』

Anders Danman 『ALL YOU NEED-LIVRE DE CLAVECIN』
41ahgpqthxl_sl500_aa300_ みません、土曜日に一般入試である上に、再来年度へ向けての大仕事もあって、なかなか時間が取れません。よって、またまた音楽ネタ。YouTube頼みとなります。
 しかし、案外こういう時でないと、こういうものたちを紹介できなかったりするので、これはこれでいいのかもしれません。実際、ここ数日の記事は(一部のマニアの方に)なかなか好評です。
 さて、今日はまたすごいものを紹介しますよ。私、これ大好きなんですよ。素晴らしい。ある意味私の理想です。
 演奏者のアンデシュ・ダンマンはスウェーデン出身のチェンバリストでトン・コープマンの薫陶を受けた人です。古楽奏者として充分に実力を持った人で、彼のデュフリの録音を聴きましたが大変素晴らしい演奏でした。どうもフランスものが得意のようですね。
 そんな彼が、「クープランがビートルズを知っていたらこんな曲を書いただろう」という大胆な仮説をもとに編曲ではなくて「作曲」をし、そして演奏してしまったのがこのCDです(!)。
 その出来がですね、本当に素晴らしいのです。こういう企画というのはたいがい「痛い」ことになってしまい、だからこそ、昨日紹介した完全コピーの方がより好感をもって迎えられたりするわけです。
 ああ、そうそう、今から50年近く前に、このダンマンと同じような発想ですごいことをやらかした人がいましたね。今や古楽界の重鎮の一人となった感のあるジョシュア・リフキンの『バロック・ビートルズ・ブック』です。これにもたまげましたっけ。
 最近YouTubeに一部アップされたので、こちらから聴いてみてください。笑っちゃうほどすごいですよ。
 本題にもどります。バッハになりきったリフキンさんと同じくらいの才能をもって、ビートルズを知っているクープランになりきったのが、このダンマンさんです。この二人のような柔軟なスタンス好きだなあ。
 ダンマンさんも完璧にクープランの作曲技法をマスターしていますね。実に自然です。いや、自然じゃないはずなんですよね。なにしろ、ビートルズが素材ですから。しかし、自然に刺激的なのはなぜなのか。
 たしかにクープラン本人も異国趣味が強く、いろいろな外国の音楽に興味を持ち、刺激を受けて自作の中に取り込んでいますよね。だから、「イギリス」のこういう「俗謡」を聴いたら、たしかにこういう曲書いただろうなと思うんです。
 新発見の和音進行、豊かな旋律、前近代音楽的な音階、ブルーノート…それらのフランスバロックへの配合のさじ加減が絶妙なんですよ。本当にお見事。楽譜が出れば、日本の演奏家たちにとっても新しいレパートリーになると思いますよ。
 解説でダンマンさんが言っていることの中で面白かったのは、クープランは英語が分からなかっただろうし、興味もなかっただろうという話ですね(笑)。だから、歌詞のイメージと与えられた舞曲のイメージは全然重ならないのだとか。
 全曲をテキストで紹介してみましょう。これ読むだけで古楽ファン、ビートルズファンは身悶えしそう。私は両方なので悶死です。

組曲 第1番 ト長調
1. Honey Pie(プレリュード)
2. Hey Jude(アルマンド)
3. All You Need Is Love(クーラント)
4. With A Little Help From My Friends(サラバンド)
5. Ob-La-Di, Ob-La-Da(ジーグ)
6. Yellow Submarine ~ Michelle(ロンド)
7. Help!(メヌエット)
8. When I'm Sixty-Four(リゴードン)
9. Your Mother Should Know(カナリー)
10. Let It Be ~ Strawberry Fields Forever ~ Here Comes The Sun ~ Cry Baby Cry(ロンド)
11. I Want To Hold Your Hand(ルール)
12. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) ~ The Fool On The Hill(ミュゼット)
13. Nowhere Man(タンブーラン)
14. Blackbird ~ Sexy Sadie ~ Yesterday(ロンド)
15. Revolution(エール)

組曲 第2番 ニ長調
16. Golden Slumbers(プレリュード)
17. Here, There And Everywhere(アルマンド)
18. Martha My Dear(クーラント)
19. Something(クーラント)
20. I Will(サラバンド)
21. The Continuing Story Of Bungalow Bill(ジーグ)
22. Yellow Submarine ~ Eleanor Rigby(ミュゼット)
23. I'm So Tired(エール)
24. Carry That Weight ~ And I Love Her ~ Mother Nature's Son ~ A Day In The Life(ロンド)
25. From Me To You(ブーレ)
26. All My Loving(ガヴォット)
27. A Hard Day's Night(メヌエット)
28. Strawberry Fields Forever(パスピエ)
29. Happiness Is A Warm Gun (シャコンヌ)

 これはもう聴いていただくしかありませんよね。まず冒頭のプレリュード(なんとハニー・パイ)をこちらでどうぞ。美しいし新しい!
 そして続くアルマンド(ヘイ・ジュード)はYouTubeにあったので、そちらでどうぞ。

 ちなみに使用楽器はクシェとタスカンのコピーです。A=392。調律は名称までは聴き分けられませんが、当然平均率ではなく古典調律です。

Amazon オール・ユー・ニード〜クラヴサン組曲

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2012.02.01

古楽版ビートルズ完コピ…Beatles Baroque (Les Boreades de Montreal) ライヴ

 あて、まだまだ忙しいので、またまたYouTubeネタです。
 一昨日のボヘミアン・ラプソディのところで、古楽版完コピの話を書きましたら、さっそく盟友のチェンバリストの方から、ありがたいコメントをいただきました。遠くてもぜひ実現しましょう!
 ということで、古楽版ロック完全コピーとはなんぞや?と思われる方のために、実際の演奏をお聴き(ご覧)いただきましょう。
 このブログでも、こちらこちらに紹介した、カナダの実力派古楽合奏団「Les Boreades」の演奏です。
 記事にも書きましたとおり、彼らは基本古楽器を使って、ビートルズナンバーを完全コピーしています。アレンジはもちろん、ボーカルのニュアンスやメロトロンの揺れなどもちゃんと再現しちゃうこだわりぶりです。
 こうしてみると、本当にビートルズというのは、西洋音楽の総決算と原点回帰的な部分があるんだなと感じます。ライヴも楽しそうですね。来日しないかな。
 で、私もぜひこういうのをやりたいのです。ビートルズだけでなく、クイーンやイエスやELPやELOなんかをね。ぜったい楽しいですよ。モダン楽器じゃダメなんですよ。その理由はかなり深いところにあると思います。
 ではたっぷりどうぞ。我々ピリオド楽器演奏家にとっても、かなり新鮮で刺激的です。

Amazon Beatles Baroque 1 Beatles Baroque 2 Beatles Baroque 3

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2012.01.31

エマーソン・レイク&パーマー 『 Live in Japan(1972年後楽園球場)』

 日も時間がないのでロックのネタです。てか、なぜ時間がないとロックなのか?w
 たぶんロックは理屈ではないからでしょう。自分にとってはロックは少年時代の記憶、少年の心ですから、大人の理屈なんか寄せ付けません。
 昨日のボヘミアン・ラプソディから、今日はさらに懐かしいところへトリップ。
 クイーンも今考えれば思いっきりプログレですよね。特にボヘミアン・ラプソディはクラシックとロックの融合というよりも、すでにクラシック音楽の領域です。
 そういう意味で最近かなり本格的に「クラシック化」した EL&P を取り上げます。日本初来日時の貴重なライヴ映像です。1972年7月22日後楽園球場。
 私は当時8歳ですから、さすがに EL&P は聴いていませんでした(笑)。彼らに出会うのは中学生になってからです。展覧会の絵はレコードがすり切れるまで聴きましたね。
 その後バロック音楽に興味を持ちヴァイオリンを弾き現在に至るのは、はっきり言ってプログレのおかげです。ロックとバロックの親和性というのはもともと高いのですね。基本、オン・ザ・ビートの譜割りですし、ポリフォニーなところとか、即興性とか。
 で、この映像は本当に最近初めて観たんですよね。これは当時の東京12チャンネルで生中継されたものでしょうか。台風が近づいていたために、おそらくカメラにビニールでも被せてあったのでしょう、期せずしてものすごくシュールでサイケな映像になっています。
 キース・エマーソンの弾くモーグもなんとなく調子悪そうですけど、それがまたある種の緊張感というか、独特のライヴ感を醸し出していますね。正直「かっこいい!」としか言いようがありません。
 ではどうぞ。

 そうそう、こちらで紹介した吉松隆さん編曲によるオーケストラ版「タルカス」が、NHK大河ドラマ「平清盛」で使われていますね。なんとも感慨深いなあ。おっと、動画があった。

 キース・エマーソンと言えば、この曲も忘れられません。音楽にも言葉にも勇気づけられました。

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2012.01.30

あっぱれ! ひとり「ボヘミアン・ラプソディー」

 ょっと忙しいので、軽いネタを一つ。
 いや、全然軽くないかもしれない。これはすごいですよ。私も複数の人間でこの曲を完全コピーしようとたくらんだことがあるので、これがとんでもない偉業であることがよく分かります。
 いくらプロとは言え、このレベルでやられると、さすがに「参った」としか言えませんね。
 一人で楽器からボーカル、そしてあのコーラスまで全て「弾いてみた」「歌ってみた」のは、アメリカのミュージシャン、リッチー・カステラーノさん。
 まあ、とりあえず聴いて観てみてください。映像もよくできている(笑)。

 こうして聴いて観てみると、カステラさん、いやカステラーノさんのすごさもですが、なんと言っても、この曲を作ってしまった、フレディ・マーキュリー、というかクイーンの偉大さを再確認せずにはいられないですね。
 どういう音楽体験があるとこういう曲が作れるのだろうか。ある意味バッハやベートーヴェン、さらにはビートルズをも超える偉業だよなあ。もちろん歌詞も含めて。
 では、改めて原曲を聴いて観てみましょう。ちなみにこのオリジナル映像作品もまた、世界初の本格的ミュージック・ビデオとして歴史に残るものなんですよね。

 むむむ、一度頓挫した古楽版完全コピーに再び挑戦したくなったぞよ。誰かやりませんか?

Richie Castellano 公式

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2012.01.22

崎川晶子 『アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳』

Refdp_image_0 昨日、クリスティーネ・ショルンスハイムを紹介しましたが、彼女と同様に、チェンバロとフォルテピアノ、さらにはクラヴィコードなどを弾きこなす日本人女性演奏家と言えば、この崎川晶子さんを第一に挙げなければなりません。
 今日はそんな尊敬すべき崎川さんのお宅におじゃまして、2月12日に行われるコンサートの練習をしてまいりました。
 まったく、私のような者が崎川さんのフォルテピアノ(こちらで紹介されている楽器です)の伴奏をさせていただくなんて、まあ信じられないというか、幸せというか、申し訳ないというか…。つくづく音楽を、楽器を続けてきて良かったと思います。
 ふだんあまり古典派を演奏しない私にとってはある種の挑戦でもあり、また勉強や成長の機会だと思っています。
 バロックに関しては、私なりにその「言葉」が体にしみついていると自負しておりますが、こうして時代が変わると、突然知らない言語で話をしなくてはならないような感じになります。それも、ここのところヴィオラばかり弾いていたのに、今回は全部ヴァイオリンですからなおさらです。
 そんなわけで、珍しく毎日練習をしているのを見て、家族は驚いております(苦笑)。
 その点、崎川さんはショルンスハイムと同様に、古典派以降の言葉も学びつつ、それをバロックに還元しているわけですね。やはり連続する他の世界を学ぶことは、その本体にとってもとても重要なことです。実はそこにこそ、私たち現代人がいわゆる古典芸術を再生(再創造)する意義と価値があるのだと、最近理解しました。
 この最新録音、「アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳」は、まさにそうした成果の粋であると感じました。レコード芸術2011年9月号において特選盤に選ばれたのも納得です(こちらのレビュー参照)。
 先日亡くなったグスタフ・レオンハルトらによる古典的な名盤以降、なかなかこれだという録音がなかったというのは事実ですね。あまりに有名な作品を含み、またある意味子どもでも弾きこなせる曲が多いということが、その主要な原因だったと思います。これを乗り越えるのは実はプロには難しいことだったりするのです。
 そういう意味では、崎川さんのこの新盤はまさに決定盤的であると言っていいでしょう。今日も見事なモーツァルトのコンチェルトのソロを生で聴きながら伴奏させていただきましたが、やはり、そうした時代的な、また楽器的な幅広さと、そしてなんと言っても真摯でありながら柔軟なお人柄による偉業なのでしょうね。見事な「バロック」の表現になっていると感じます。
 そう、もう一つ、崎川さんがフランスで学んだということも大切なポイントかもしれません。バッハ自身はもちろん、当時のドイツではフランス志向が強くありましたからね。フランスの音楽や言語を知ることは、ドイツバロック音楽を演奏するにあたって、実はとても重要な要素だと思います。
 そうしたフランス的な優雅さやエスプリのようなものが、この音楽帳の内容と見事に調和しているのです。特に音符の数の少ない曲(子どもでも弾ける曲)において、その「間」を埋めるのは、そうしたある種の「豊かさ」であるべきで、それはたぶん、バッハ自身が憧れた部分であっと想像されます。バッハはそれが苦手で、やたら音符を詰め込んじゃいましたからね(笑)。
 私も、今回のチャンス(ある意味ピンチ?)を活かして、大いに勉強させていただきます。そして、できるかぎり生命力に満ちた音楽を創造できるよう頑張ります。
 このたびの共演も不思議な縁のなせるわざですけれども、実は崎川さんからさらにもう一つ広がりそうなのです。本当に音楽というのは面白い。やめられませんね。

Amazon アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳

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2012.01.20

クリスティーネ・ショルンスハイム 『J.S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集』

20120120_224542 日追悼記事を書いたグスタフ・レオンハルトの薫陶を受けた鍵盤奏者の一人、ドイツのクリスティーネ・ショルンスハイムの平均率全曲集が発売になります。
 発売を前にナクソス・ミュージック・ライブラリーで聴きました。ここのところ、あまり心に残る平均率の演奏がなかったのですが、久しぶりに静かな興奮を覚える録音に出会うことができました。
 ショルンスハイムの演奏は、私はかなり昔から聴いてきました。昔CDマニアだった頃、ドイツのマイナー・レーベル「Capriccio」をけっこう集めていまして、若かりし頃の彼女のチェンバロ演奏やオルガン演奏に触れていたんです。
 通奏低音も含めて、非常に正統的な演奏をするなと思っていましたから、もしかすると、この平均率もある意味ドイツらしい堅苦しい演奏になるかなと思っていたんですよね。
 そうしたら、まあたしかに正統的ではありますが、しかし一方で大胆なアプローチもあり、非常にバランスの良い生き生きとした演奏になっていたので、ちょっと意外な感じさえしました。
 これは私の勝手な想像ですが、彼女の演奏の基本的なところにはレオンハルトの影響があり、表面的な部分というかある種現代的な部分には、コープマンやシュタイアーの影響があるように思います。
 また、最近盛んに演奏しているフォルテピアノによる古典派からのフィードバックもあるのかなあ。
 新鮮に聞こえる要因の一つに楽譜の解釈という学問的な部分もあるように感じます。冒頭の有名なハ長調プレリュードやフーガを最後まで聴くと、もう私の言うところが分かると思います。
 そして、一番驚いたのは、これです。これまた有名な第一巻掉尾のロ短調プレリュード。ある意味伝説となっている(?)私のマトリョミン(テルミン)などによる演奏よりも過激かもしれない。この名曲にこれほどまでに装飾、変形、誇張を加えた演奏は初めて聴きました。「女の覚悟と勇気」に拍手。
 せっかくですから、特別に(ナイショで)お聞かせします。こちらをクリックしてください。かっこいいですよ。
 ところで、この録音に使われている楽器は、コルマールにあるウンターリンデン美術館所蔵のリュッカース・チェンバロです。1624年に製作されたオリジナル。彼女はこの楽器に関してこう語っています。
 「私が知っている最も美しい楽器であり、魅惑的な音色を持っています。そして控え目な外見で現実的。暖かくよく歌う楽器です。バッハの対位法音楽にとって不可欠な全ての要素を持ち合わせています」
 録音で聴いてもこの楽器の素晴らしさは充分分かります。レコーディング技術も高いのでしょうね。
 そうそう、YouTubeにこの楽器と平均率に関する彼女のインタビューがありましたのでどうぞ。演奏も少し聴けますし観られます。この演奏がいかに楽器からインスパイアされて成立したか想像できますよ。

 ショルンスハイムさん、最近東京藝術大学の特任教授か何かになったと聞きました。一昨年、昨年には日本でも平均率全曲演奏会を催していましたね。今後日本でも彼女のファンは増えていきそうです。

Amazon BACH, J.S.: Well-Tempered Clavier , Books 1 and 2 (Schornsheim)

NMLで聴く


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2012.01.19

追悼 グスタフ・レオンハルト…映画『Chronik der Anna Magdalena Bach』

 の音楽人生に多大な影響を与えた「神」、グスタフ・レオンハルトさんがお亡くなりになりました。本当に残念です。
 彼の多くのレコードによって古楽に目覚めた私が、衝撃を受け大興奮をした映画を、久し振りに観賞して、冥福を祈りたいと思います。
 この映画「アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記 (公開時「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」)」を観たのは、たぶん1984年くらいだったと思います。どこでどういうメディアで観たのか記憶はないのですが、その感動は今でも忘れません。誰かにビデオを見せてもらったのかなあ。それとも劇場で観たのかなあ。
 いずれにせよ、あまり古楽器演奏の映像に触れる機会のなかった当時としては、非常に刺激的で貴重な体験であったと思います。
 ただの古楽演奏記録映画ではないですからね。バッハのクロニクルであり、現代の名演奏家たちがバロック時代の楽器、舞台、そして扮装で、往時を忠実に再現しているのです。もちろん主人公バッハは油の乗り切ったレオンハルトが演じています。
 もちろん、現代の古楽演奏に比べれば、この映画が製作された1967年当時の演奏は、ある意味精度が低かったり、ある種の間違いもあったりするわけですが、なぜか今どきの演奏よりも感動を催すんですよね。なんなんでしょうか。
 きっと、そこに「発見」の喜びや興奮があったからでしょう。先駆者たちのエネルギーに満ちていると思います。
 マニアックな映画ファンには、ストローブ&ユイレの監督作品としてもたまらない魅力がありますね。ある意味斬新というか、久々に観ると、このスタイルでこの感動的な作品を作ってしまうのだから、おそるべしです。結局はバッハの音楽を「映画」が邪魔していないということでしょうかね。これって大変なことです。
 この映画に刺激され、この頃から私はグレゴリオ音楽院でアンサンブルを習い、都留音楽祭でスタッフを務めるようになり、どんどん人脈が広がり、そして今に至っています。
 この映画で演奏されている曲もずいぶんと自ら演奏する機会を得ました。そして、3月にはとうとうマタイ受難曲をオリジナル楽器で演奏します。こんな日が来ようとは…夢のようですね。
 これも本当にグスタフ・レオンハルトさんのおかげです。ありがとう心の師匠。安らかにお眠り下さい。そして、天国でもバッハを演奏し続けて下さい。

Amazon アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記 (公開題「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」

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2012.01.16

iPod nano (第6世代)

20120117_162607 日は上の娘の誕生日。もう12歳か。早いものです。
 そして、彼女は今年の春から私の勤める中学・高校に入学します。6年も一緒に登下校するというわけです(笑)。
 そんなに嫌がれていないようなので、ちょっと嬉しかったりしますね。ま、これから父娘の関係がどうなっていくのか分かりませんが。
 と、そんなわけで、祖母から誕生日+合格祝いにこれを買ってもらいました。iPod nanoです。
 届いてすぐにどんどん使いこなしている娘を見ると、まあ今どきの若いもんはすごいなというのと、Appleの製品もまたすごいなということを感じますね。
 もちろん、娘たちは両親のiPhoneをしょっちゅういじっており、そのユーザーインターフェイスには慣れていたわけですが、それにしても子どもが理屈抜きにすぐに使いこなせるというのは、まさにジョブズの考えた「縁」創造空間へのアクセシビリティの高さを表しているでしょう。
 ただ、このiPod nano第6世代に対しては、小さすぎるとの意見もありますよね。たしかに大人、特に大柄で指の太い欧米人男性にはきついかな。さらにディスプレイも小さいわけですから、老眼世代にはつらいかも。
 ちなみにウチでは、iPod nano3台目です。今まで、第2世代と第3世代を使ってきました。これらはMacを買った時についてきたもので、特に買いたくて買ったわけではありませんでした。
 それら及びその後の4、5世代とは大きく変わって、この第6世代はあの独特のクリックホイールを持っていません。あれはあれで便利だったんですけどね。
 まあ子どもにとってはどちらも同じような使い勝手のようですが。私たちアナログ世代からすると、ああいうクリック感というのは忘れがたいんですよね。iPhoneももっとクリック感があるといいな、安心できるなと思ってしまいます。
 そしてこれも勝手な意見ですけど、物としての質感というか、実在感、存在感、そういうことで考えると、やはり小さすぎるような気がします。あの第2世代の感じはとても良かった。昔、こちらにも書いたとおり、おいしそうな質感でした。それに比べるとちょっと味わいに欠けるかもしれません。
 まあそれでも子どものおもちゃとしてはぜいたくすぎるシロモノですね。娘が何を聴いてるかと思えば…全部アニソンでした(笑)。すっかりオタク気質が遺伝してしまったようで、ちょっと困ってます(笑)。

iPod nano 公式

Amazon iPod nano


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