仏様の指
うわ〜、今日はもう8月の5日です!ためちゃいました。記事を書く時間が全然ありませんでした。
東北・北海道ツアーが無事終わり、今、稚内から函館へ9時間かけて特急で移動中です。
だいぶ遅くなりましたが、頑張って追いつくように記事を埋めていきますね。
え〜と、この日7月26日は仙台にて東北・新潟の私学の先生方対象の研修二日目。生徒指導部会にて2時間半講演をさせていただきました。
おかげさまで大変好評をいただき、東北・新潟のいろいろな学校さんにお招きいただくことになりました。ありがたや。
タイトルは「新時代の生徒指導」。「導」について「duc」のいう語根から説明し、そして「指」に関しては、中学時代の恩師である大村はま先生の「教えるということ」から次の一節を引用してお話させていただきました。
学校の先生に限らず、多くの指導者(つまり大人全て)に有益な素晴らしい話だと思います。ぜひお読みください。
(以下引用) …私はかつて、都立八潮高校(当時、府立第八高女)在職のころ、奥田正造先生の毎週木曜の読書会に参加していました。奥田先生は、そのころ成蹊女学校の主事をなさっていました。先生は私が今日までお会いした先生の中で、いちばんこわい先生でした。それで、読書会に行くときも、気をつけて、どなたかがすでに到着しているあとに着くように、つまり、先生と二人にならないように気をつけておりました。その日も、私は、じゅうぶん計算して行ったのですが、どうしたことか、だれもまだ見えてなく、私は先生と二人きりになってしまいました。
先生の前でかしこまって緊張している私に、先生は急に「どうだ、大村さんは生徒に好かれているか」と、お尋ねになったのです。私は、はたと、返事に困りました。好かれていると言えばどういうことになるか。好かれていないと言えばどういうことになるか。瞬間、子どものようにぶるぶるふるえてしまいまして、やっと、「嫌われてはいません」という、へんな返事をしました。先生は「そう遠慮しなくてもいい、きっと好かれているだろう。学校中に慕われているに違いない。」と言って、お笑いになりました。私は、どうしてよいかわかりませんので、下を向いてもじもじしていますと、先生が一つの話をしてくださったのです。
それは「仏様がある時、道ばたに立っていらっしゃると、一人の男が荷物をいっぱい積んだ車を引いて通りかかった。そこはたいへんなぬかるみであった。車は、そのぬかるみにはまってしまって、男は懸命に引くけれども、車は動こうともしない。男は汗びっしょりになって苦しんでいる。いつまでたっても、どうしても車は抜けない。その時、仏様は、しばらく男のようすを見ていらしたが、ちょっと指でその車におふれになった。その瞬間、車はすっとぬかるみから抜けて、からからと男は引いていってしまった。」という話です。「こういうのがほんとうの一級の教師なんだ。男はみ仏の指の力にあずかったことを永遠に知らない。自分が努力して,遂に引き得たという自信と喜びとで、その車を引いていったのだ」こういうふうにおっしゃいました。そして「生徒に慕われているということは、たいへん結構なことだ。しかし、まあいいところ、二流か三流だな」と言って、私の顔を見て、にっこりなさいました。私は考えさせられました。日がたつにつれ、年がたつにつれて、深い感動となりました。そうして、もしその仏様のお力によってその車がひき抜けたことを男が知ったら、男は仏様にひざまずいて感謝したでしょう。けれども、それでは男の一人で生きていく力、生きぬく力は、何分の一かに減っただろうと思いました。仏様のお力によってそこを抜けることができたという喜びはありますけれども、それも幸福な思いではありますけれど、生涯一人で生きていく時の自信に満ちた、真の強さ、それにははるかに及ばなかっただろうと思う時、私は先生のおっしゃった意味が深く深く考えられるのです。
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