『オッペンハイマー』 クリストファー・ノーラン 監督作品
大阪梅田で鑑賞。すごかった。
映画としての評価についてはいろいろな人が語っているので、私は私なりの感想というか思索の一部を記録しておきます。
「我は死なり。世界の破壊者なり」
オッペンハイマーは自らをヴィシュヌ神の化身クリシュナになぞらえ、このように語りました。ここでの「我」とは、まさに「我」の発見の産物である西洋近代科学そのものでありましょう。
一見、「我」を排除するかのような科学は、実は「我」の化身であったという皮肉。これは今西欧社会が直面している危機そのものでもあります。
そうしたパラドックス的な表現がここかしこに見られました。被爆地を描かないことよって描いていたのもその一つでしょう。音楽や音声もそのような効果を狙っていましたし、また、粒が波になり、波が粒になるような、観る者の分析的理解と感情の行き来にも、そうした傾向が感じられました。
そう、時間へのこだわりも含めて、ノーラン監督のこだわりは、まさにそうした反二元論的な世界観なのだと思います。
はたして人類の智慧とは愚なのか賢なのか。映画の根幹部分さえも揺れ続けています。
文明とは、人間の我欲によるエントロピー減少の所業です。そして、文明破壊の「爆発」とは、それを一気に自然に戻す、エントロピー増大の仕組みだとも言えましょう。
これは最低でもあと3回は観ないといけないかも。この作品を通じて、もっと気づきたい。そう思わせる傑作でした。
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