『ある男』 平野啓一郎 原作・石川慶 監督作品
この日は博多から東京に帰って、若者中心に100人が集まる某イベントにてお話をさせていただきました。珍しく山陽新幹線が人身事故で止まってしまい、どうなることかと思いましたが、幸運にも席が取れて間に合いました。
しかし、ダイヤは乱れておりまして、博多から東京までちょうど6時間という長旅。おかげでいろいろたまった仕事をすることができたとともに、映画も1本観ることができました。それがこちら。
物語の舞台の一つである「文具店」は山梨県笛吹市に実在するお店を使ったとのこと。安藤サクラ演ずる主人公は非常に辛い役柄。サクラさんは役に入り込むタイプでもあるので、辛すぎて東京の家族の元に「あずさ」で緊急避難したとのこと。たしかに良い演技です。
家族と言えば、サクラさんの義父である柄本明さんの怪演もすごい。一癖も二癖もある人物の怪物性を見事に表現していますね。息子さんたち含めてすごい家族だ。
対する窪田正孝さんも、寂しさと優しさ、そして狂気を持った不幸な男を見事に演じています。妻夫木聡さんはその点、いつもの爽やかさで、周囲の暗さに対する光の存在として好演しているなと思ったのですが、まさかの最後には「闇」が待っていたと。
そう、平野啓一郎さんの原作小説もかつて読みました。小説と映画は当然描写法が違うわけですが、この作品については比較的同じイメージを受けることができた。案外珍しいケースですね。ひとえに石川慶監督の手腕によるところ大です。個人的には「蜜蜂と遠雷」よりも良かった。
映画を観たあと、あらためてAudibleで原作を「聴いている」のですが、平野さん、初期のあの難解な節回しから解放されて、本当にリズム感の良い文章を「聴かせてくれる」ようになりましたね。
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