ニッケルハルパによるバッハのシャコンヌ
一昨日の25絃箏に続き、変わり種のシャコンヌを。
このニッケルハルパはスウェーデンの民族楽器ですが、現在の形になったのは20世紀になってからのことで、かつてはもっと素朴な楽器でした。ですから、私は古楽器というよりは、近代楽器だと考えています。
一度演奏させてもらったことがあります。なるほどヴァイオリンに鍵盤をつけたような楽器であり、まあ、たしかにヴァイオリンよりはずっととっつきやすい楽器だと感じました。見た目はとっつきにくいのです(笑)。
共鳴弦やドローン弦を持っていることからも、たしかに近代ヨーロッパ音楽(クラシック音楽)以前の民族的な特徴を備えています。しかし、先程書いたように、一方では半音階を網羅するために鍵盤(タンジェント)の数を増やしたというのは、モダンな要請によるものに違いありません。
さて、この楽器で弾くシャコンヌはどうでしょうね。一昨日の箏とは、ある意味対極にある楽器です。
弓奏楽器なので音を持続させることは可能ですが、タンジェント(鍵盤・スイッチ)で音程を決定するので、たとえばヴィブラートやポルタメントなどは原理的に不可能です。
この曲の難しさ、音程を保ちながら和音を指で押さえるというところに関しては、タンジェントのおかげで容易かつ正確になっています。
では、そうして生まれた音が感動を呼ぶかどうかというのは、ちょっとまた違う次元の話になりますよね。
実際、一昨日の箏の演奏と比べると、どこか平板で淡白な感じがしてしまう。ここが不思議なところなのです。ただ正確に音を出せばいいわけではないというところが音楽演奏の難しさ。
こういう演奏を聴くと、やはりこの神曲は、ヴァイオリンで弾くことに意味があるような気がしてきますね。箏でもニッケルハルパでも、あるいはチェロで演奏する際も、実音より低い音、5度下や1オクターヴ下で演奏することが多く、結果として残響も多く深みのある音世界が現象しそうですが、なぜかやはりのヴァイオリンの、あの低音が限られた中での演奏に敵わないような気がするのです。
では、他の作曲家の無伴奏ヴァイオリンのための作品に「深み」があるかというと、そうではない。やはり、バッハは天才なのだなあと改めて感じさせられました。
では、究極のヴァイオリンでの演奏はというと、実はまだそれに出会っていないのです。なんとなくイメージはあるのですが(もちろん自分では弾けない)。
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