寺田寅彦 『静岡地震被害見学記』 (昭和10年)
昨日、山崎貴監督のリアリティーの話を書きましたが、日本人は西洋の自然科学的な理性を受け入れつつ、どこかで古来の芸術的な感性を持ち続けることができる稀有な存在ですよね。
「アルキメデスの大戦」では架空の天才数学者が登場しました。あの頃の科学者には、まさに理性と感性のプロポーションの取れた天才が多かった。
寺田寅彦なんかその代表格でしょう。彼の散文、韻文はどれも素晴らしい。そんな彼の一つのエッセーを紹介しましょう。
昭和10年7月11日、静岡地震が発生しました。久能山付近を中心に大きな被害で出て9人の方が亡くなりました。最大震度は6。M6.4と推定される直下型地震でした。
私の実家のある谷津山の北西側は大きな被害はなかったようです。やはり川の流域だった地域の被害が大きかったとのこと。東海地震の際の被害想定の参考になりますね。
さて、その東海地震の危険が叫ばれて半世紀近くになりますが、なかなか発生しません。そうこういしているうちに、比較的安全とされた複数の場所で大きな地震が発生してしまいました。今回の能登半島地震もその一つです。
この情報化の時代になっても、やはり報道される被害はその実態を伝えているとは言えませんし、ここで寺田寅彦が鋭く指摘しているとおり、逆に被害がない地域のことはなかなか報道されません。
今回の能登に関しても、たとえば金沢市などではそれほど大きな被害はないので、地元の人たちは能登の復興のためにも観光に来てもらいたいと思っていますが、県外の人からすると「石川県には行ってはいけない」と考えがちです。難しいところです。
被災地入りした寺田寅彦が、正直な感想を述べているこの小文。やはり科学と芸術、理性と感性がうまく融合した作品となっています。ぜひお読みください。
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