飯島勲 『横田めぐみさん奪還交渉記録』 (文藝春秋)
ジャニーズの会見、皆さん見ましたか。
帝王の死後、帝国が自壊していくのは世界史の常。もちろん、性加害は許されざる犯罪であり、ジャニー喜多川を断罪すべきは当然のことですが、それを数十年にわたった黙認してきた日本社会の、特に芸能界とメディア、マスコミの悪弊についても、真剣に考えねばなりませんね。
いのっちが言うとおりです。彼らしく穏やかに述べていましたが、今になって突然糾弾する側に回るマスコミ、メディアも自分ごととして反省し、場合によっては強く責められねばならないでしょう。
帝国の弊害、自壊ということで言うと、この文藝春秋の飯島勲さんの記録公開記事はとても興味深かった。
北朝鮮という、歴史的限界を迎えつつある帝国。それを見かねて命懸けで訪朝した飯島さんがギリギリの交渉を行った貴重な記録。
何度も書いているように、私は横田めぐみさんと幼なじみであり、幼少期に一緒に遊んだ仲です(記憶はほとんどありませんが)。のちにご縁あってご両親が学校を訪問した際、当時のアルバムを見ながらお話もさせていただきました。
私の父とめぐみさんのお父様とが同じ職場だったのです。また、故安倍元首相夫妻とも懇意にさせていただいていた関係もあって、私にとっては拉致問題は全く他人事ではありません。
また、飯島さんの並外れた才と行動力についてもよく知っていますから、この記事は格別に興味深く読ませていただきました。
加えて、学校や身近な地域においても、小規模ながら「帝国」が出来上がっていく過程を見てきましたので、なるほど全て雛型であり、それはすなわち私たち自身にもそのような危険な「種」が存するのだなと感じているところです。
利害関係や師弟関係が進むことによって、一人に権力が集中すると、周囲の忖度が始まり、結果その「帝王」は我欲を助長させてしまいます。そして、その多くは本能的欲望の肥大化を生み、各種ハラスメントとして表現されていきます。
影でそれを糾弾する人は無数にいますが、その声は表には出てきません。そこに裸の王様が完成します。そして必ず限界を迎える。しかし、場合によっては、その限界の前にその王様が寿命で亡くなってしまうこともあるのです。
今回のジャニーズの件も、もう数十年前からずっと言われてきたことです。それがなぜ今になって表に出たのか。単に外国からの指摘があったからなのか。
ジャニー喜多川の父が高名な僧侶であったことも考え合わせると、ある種の歴史的な日本文化の功罪を背負っていたとも言えましょう。
低身長の美少年を活躍させる(…すなわち宝塚の逆)場を作り、多くの若者たち(ファンも含めて)を救い、夢を与え、戦後日本の芸能文化を作り上げてきたことも評価しなければなりません。
ジャニーズの興行に何度か行ったことがありますが、思想的なところも含めて、正直レベルの高い内容で感心しました。
そう、こういう問題を語る時は、自分ごととしての距離感と、世界史的、文化史的な距離感の両方が必要なのです。また、いつかこのことについては書きたいと思っています。
ジャニーズの問題も含めて文藝春秋の10月号は、人類の、人間の、自分の愚かさを知るよき教科書となっています。ご一読を。
文春オンライン 《2013年飯島勲極秘訪朝》7時間全記録初公開
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