『福田村事件』 森達也監督作品
観てきました。いやはや、すごい映画でした。
ちょうど百年前。関東大震災後に起きた悲惨な事件。
事件の内容やそこに至る経過は歴史的な事実として知っていたつもりでしたが、これほどまでに心を揺さぶられるとは。
森達也監督の初の劇映画。
なるほど、監督は今まで主にドキュメンタリー映画を撮り、真実の中から物語を紡ぐという手法を極めてきましたが、今度は逆、物語から真実を紡ぐということに挑戦したわけですね。
そしてそれは大成功であったと思います。
この映画の内容に対して、たとえば偏狭な保守主義者たちは、そんな事件はなかったとか、実際に朝鮮人や穢多非人は不逞を働いていたとか言うのでしょうが、それもまた、この映画に揺さぶられているからこその反応です。
一方で、リベラルに偏り過ぎな方々は、この映画は素晴らしい、やはりかつての日本(日本人)は間違っていたのだと叫ぶのでしょう。それもまた反応です。
そうした「反応」が論理より先に感情として現れるということは、そう、私たち自身の中にも「狂気」の種があるからでしょう。もちろん私もそうです。
森監督の、リアルを凝視してきたからこその演出手腕はもちろん、私は(勝手にですが)荒井晴彦さんの臭いに感心してしまいました。
ある意味不謹慎かもしれませんが、ああいう時の(残酷なことをする時の)人間の心理、高揚感、非倫理性というのは、なんかエロに通じるなと感じたのです。本能なのでしょうか。
当時の田舎の日本人の純粋な「不貞」も重層的に描かれていますが、それ以上に純粋かつ集団的な「不逞」の方がエロチックに感じてしまった。
いかんいかんと思ったけれど、自分の中にそういうとんでもなく恐ろしい種があることを再認識させられてしまった。
もうそれだけでも、この劇映画の目的は見事に達成されたと思います。少なくとも私にとっては。
時代という舞台の再現、その上で演じる役者さんの凄まじい演技。物語の力をまざまざと見せつけられた気がします。正直、予想の百倍くらい衝撃的、(感動ポルノではなく)感動的でした。
もし機会がありましたら、ぜひ劇場に足を運んでみてください。
岡田斗司夫さんのような感想もありだと思います。
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