映画『生きる FROM NAGASAKI』 松本和巳監督作品
長崎原爆忌。戦後78年。いつも思うことは、時の流れは絶えずして、いつか被爆者も兵隊経験者もゼロになる瞬間が訪れるという事実です。
それが「歴史になる」という意味であるのも真理であり、ある意味そういう「忘却」の瞬間の積み重ねと、それに抗う生命の意志というものが、この世を構成しているとも言えましょう。つまり、モノとコトの拮抗。
現代においては、テクノロジーによってその「コト」の方法と質は、かつて考えられないほどにリアルになっています。
この作品のようなインタビューによる歴史の伝承も非常に重要な「コト」です。逆に言うと、私たちは歴史の継承、つまり自然の忘却を人工的に記憶、記録していくために、テクノロジーを発達させたとも言えます。
オーラル・ヒストリーが文字によってではなく、映像と音声と編集によって記録される時代になり、それが人間という愚かな存在にとって記憶力と伝播力を補うに足る存在になりました。
松本和巳監督が、このタイミングでこの作品を残してくれたことは、たしかに人類にとって良き知らせであると言えましょう。こういう「コト」がより多くの皆さん、特に若者たちに届くことを祈ります。
数年前に、この作品の中においても重要な存在である永井隆さんの「浦上燔祭説」を紹介しました。ぜひそれもお読みいただきたい。
その上でこの語り部たちの言葉と表情を受け取ってもらいたい。広島に建つ「過ちは繰り返しませぬ」の深い意味も理解できると思います。主語を明示しない日本語だからこそ、「罪」を誰かのせいにすることなく、人類全体の普遍的な「真理」として表現しているのです。
どっかの誰かは、この言葉に違和感を覚えないヤツは自虐史観に冒されているというようなことを言っていましたが、逆でしょう。
武立さんとセーラーのオルガンを通じての交流…セーラーは朝鮮戦争へ行ったまま帰ってこない。仲小路彰が言うように、第三次世界大戦は朝鮮戦争から始まって現在も続いている、ロシアとウクライナの戦争もその一部である。
長崎が、人類史上最後の被爆地となることを願います。
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