映画『君たちはどう生きるか』 宮崎 駿 監督作品
次女が観に行きたいというので、事前情報なしで私も鑑賞いたしました。
結論から言うと「よく分からなかったけど、すげぇな」でした。
ジブリ作品には元々あまり興味がなく、家族が観ているのを横目で盗み見する程度でしたが、そんな私でもこの作品は「集大成」的には感じました。
もっとはっきり言ってしまうと、宮崎駿監督というカリスマの最後の仕事に、考え得る最大の才能と時間とお金がかけられたのだから、それはすごいのは当たり前という感じでした。
冒頭の火事のシーンだけで、世界の美術史に残るであろう「絵」の連続を見せられた感じがして、正直圧倒されました。西洋と東洋の両美術的世界を統合・融合する日本的美術の世界、ここに極まれりです。
背景の西洋的リアリズム描写と、キャラクターを中心とした東洋的リアリズム描写の同居という、本来は不自然きわまりないはずの画面が、どうしてここまで自然に感じられるのかという驚き。
東西は、主に「輪郭線の有無」と「色彩の平板化の度合い」で峻別されるのですが、それを自然に同居させてしまうのは、日本独特の文化であり、浮世絵や漫画、アニメに慣らされた私たちにとってはそれこそ自然なことなのかもしれません。
それはすなわち、日本人の脳内リアルが、意識(コト・カタ)と無意識(モノ・マナ)の総体とそのバランスであるということなのですが、それがストーリーにおいても実現しているのが興味深かった。
つまり、「分かる」と「分からない」がそのままの形で放置されることが「リアル」になっていたわけです。「モノガタリ」の本質は実はそこにあり、だからこそ「モノ」を「カタる」と称した。
そういう意味で、私はこの作品を「よく分からなかったけど、すげぇな」と評し、だからこそ見終わったあとに不快にはならなかったのです。
これは新しい日本の神話なのかもしれませんね。ある意味そういう陳腐な感想しか出てこない。やっぱり宮崎駿をすごかったということか(なんだか悔しいけれど…笑)。
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