春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり (道元)
今日は道元忌。とはいえ、本来旧暦ですし、23日とも29日とも言われていますので、全く厳密ではありません。
永平寺では9月の22日から29日まで、「御征忌(ごしょうき)」と称して厳格な法要が行じられます。
亡くなったのは1253年ですから、770年前ということになりますね。
道元の書き残したものは奥深く難解であり、私もまだまだ表面的にしか理解しておりません。
その点、この和歌はシンプルでいいですよね。
四季ごとの当たり前すぎる風物を並べ、最後に「すずしかりけり」と結ぶ。センス最高です。
実は「すずしかりけり」の解釈にキモがありまして、たとえば表面的に「冬雪さえてすずしかりけり」という文脈で読むこともできますし、よくある注解のように、この「すずしかりけり」は全体にかかっており、「すがすがしい」とか「いさぎよい」という意味であるとすることもできます。
しかし、私はやはり「さえて」からの意味的連続を無視できないと感じております。それまでは名詞を並べておいて、ここでは動詞の連用形+接続助詞「て」ですからね。
接続助詞「て」は完了の助動詞「つ」の連用形から派生したものであることからもわかるとおり、そこまでの表現、事象を一旦とりまとめる機能を持っています。
その語感からして、私には「春の花も夏のほととぎすも秋の月も、全ての思い出を覆い清める純白の白い雪がすがすがしい」と捉えられるのです。
そこには、まさに仏教的な「無常観」があり、また一旦リセットされた純白のキャンバスに春夏秋の風景を描いていくであろうという「再生」「常若」の思想が表現されていると思うのです。
過去にこだわるな。それがたとえ美しいものであっても。あるいは悲哀に満ちたものであっても。
いかがでしょうか。
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