追悼 アストラッド・ジルベルトさん
昨日、お亡くなりになったとのこと。83歳ですか。4年前に夫ジョアン・ジルベルトが亡くなっていますから、ようやく二人は天国でまた一緒に演奏できるようになったのですね。
20代の頃、モダン・ジャズからボサノヴァにも興味を持ち、特にジョアン・ジルベルトのギターに憧れまして、教本なんか買ったりしてちょっと練習した時期もありました(当然断念しましたが)。
ですから、自然とアストラッドの歌声もよく聴きました。
今では、アストラッドの歌い方こそボサノヴァの王道のように思われていますが、実際当初彼女は素人であり、その素人っぽさ(プロっぽくないところ)を、ヴァーヴのクリード・テイラーが逆手に取ってブームを作り出したというのが事実でしょう。
もちろんその前にジョアン・ジルベルト自身があの囁くような、ある種平坦な歌い方を考案していたわけですが、それをアストラッドが引き継いでアメリカでヒットさせたのです。
こういった歌唱法は、ブラジル本国だけでなく、黒人歌手中心だったアメリカのジャズ界にも衝撃を与えました。つまり、アメリカの白人たちがソウルフルではない歌に「ノヴァ」を感じたのですね。
またこれは巡り巡って、日本のニューミュージックを生んだとも言えましょう。素人っぽい歌だけでなく、複雑な和声という点においても、ボサノヴァは日本人には魅力的でした。
そう、極東日本人は、西洋的な、あるいはアフリカ的な「うまい歌」や、クラシックの伝統から来る純粋すぎる和声の連続が苦手であり、西洋音楽のシステムと楽器を使ってそれ自身を乗り越える方法として、ボサノヴァ的な手法はありがたい存在となったのです。
ですから、アストラッドの日本人の歌唱に与えた影響は、あまり意識されてこなかったにせよ、無視できないほど大きなものであると、私は考えています。
その嚆矢となったこの「イパネマの娘」は、あまりに耳に馴染んでしまっていますが、しかし改めて聞いてみると非常に「ボサノヴァ(新鮮な魅力)」であることがわかりますね。
感謝の念をこめつつご冥福をお祈りします。
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