百歳の富士 奥村土牛
昨日の足すことと引くことの難しさの話から、奥村土牛の富士を思い出しました。
音楽にも美術にも文学にも通じますが、リアリズムというのはなんなのか考える時、やはりまず私は「脳内リアル」にアプローチしたい。
西洋的なリアリズムではなく、日本的なリアリズムと言っても良いでしょう。
もともと日本人は言語はもちろん、音も色も輪郭も、そして自らの五感さえも信用していないので、はなから西洋的な意味でのリアルな描写は捨て去っています。
信用していないから、なるべくそれに頼りたくない。不立文字、以心伝心。文章より歌が勝り、歌も17文字の句にまで削られる。
余白を埋めようなどとは思わないし、あるはずもない輪郭線を引いて(極端な四捨五入をして)、世界を単純化する。
そういう意味では、奥村土牛も晩年、体力が衰え、知力も技術も衰えたが、しかしそうした日本人表現者としての気力はみなぎっていた。
現地に行って五感を超えたところで対象と一体化し、その記憶をもとに絵筆をふるう。これぞ表現者として最高の境地でしょう。
先ほど「気力はみなぎっていた」と書きましたが、この番組の後半でもわかるとおり、実際は気力がわかない日々もありました。そして、そんな時、土牛を励ましたのは、師匠横山大観の言葉「天霊地気」であるとのこと。
同じく富士と向き合い続けた天才、横山大観のこの言葉は実に重いですね。大観は土牛にこう語ったそうです。
「君、絵というものは、山水を描いても、花鳥を描いても、宇宙が描けなかったら、芸術とは言えないよ。鳥を描くなら鳥の声も聞こえなくてはならぬ。それが宇宙の生気というものではないか」
ここまで来ると、足すとか引くとかいう人間的按配もどうでもよくなりますよね。王仁三郎が「芸術は宗教の母」と言った意味もよくわかるというものです。
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