お客様は神様であるべきです
先日、秋田の能代方面に行きました。能代と言えば、このバス会社の広告が話題になっていますね。
秋田のような比較的穏やかな県でも、こんな広告を出さねばならないのかと思うと、なんとも複雑な気持ちになりました。
この広告には「お客様は神様ではありません」とはっきり書いてあります。お客様と社員は対等であるべきだと。
勘違い甚だしい狂ったクレーマーに対して、このような強い口調で言い返す企業や学校はあまりないので、今回この会社は高く評価されました。
つまり、ほとんどの皆さんがこの広告の内容に賛同したということです。
学校で長いこと怪物退治…いやいや怪獣懐柔をやってきた経験から、私も共感いたしました。
しかし、今日はちょっと違った視点から、「お客様は神様であるべき」ということを記したいと思います。
「お客様は神様です」と言った三波春夫さんの真意が、「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払って澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。だからお客様は絶対者、神様なのです」であることを知っている人は多いと思います。
プロとしての仕事に対する姿勢は、たしかにこうあるべきで、この意味では私も三波さんの言葉に完全同意します。
では、プロの仕事師ではなく、もう一方、神様であるお客様の立場で考えるとどうでしょう。
そう、「神様」が執拗にいやがらせをしたり、理不尽な要求をするかどうかということを考えてもらいたいのです。
ほとんどの場合(悪徳業者の詐欺的行為でないかぎり)、私たちお客は自分ではできない仕事を代行してもらっているのであり、そこには常に感謝の気持ちがあるべきです。
もちろんサービスを提供する側に落ち度があることもあるでしょう。しかし、たとえばバスのような日常的、公共的にお世話になっているサービスに対して、ある特殊な状況だけを取り上げて怒り狂うのは、神様ではなく悪魔の所業です。
こんな問題が発生するのは、お金を払っているからというところに意識が行き過ぎているからでしょう。サービスとお金の等価交換をしている、お金を出してサービスを買ってやっているという意識ですね。
本来、代金はサービスに対する感謝の表現である、お金とは「気持ち」を公共化、標準化したものだと考えるべきです。江戸時代など、そういう意識が強かったことでしょう。
ですから、場合によっては、カネではなくモノで、あるいは言葉や態度によって、その感謝の表現を代用することができたのです。
ところが、近代経済学においては、マネーはもっと唯物的な存在になってしまいました。即物的、即時的な交換のアイテムとして、あるいは価値基準として、使い手である私たちよりも上位に位置するようにさえなってしまった。
money の mon は monster の mon と同源なのですよ。カネは人を怪物、悪魔に変える力を持っています。
気をつけたいですね。
「お客様は神様であるべき」なのです。日本の神様のようなおおらかさと、全体を俯瞰する力を持ちたいですね。
さあ、これからは、モンスター・カスタマーに「お客様は神様だろ!」と言われたら、「そうです。そのとおりです。お客様は神様です。神様はそんな態度取りますか?」と返しましょう(実際には火に油を注ぐことになります!…笑)。
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