C.P.E.バッハ 『チェンバロ協奏曲ホ長調』
今日は隠れた名曲を一つ。
バッハの次男、バロックと古典派をつなぐ重要な役割を果たしたというより、ポスト・バロック、前古典という一つの時代を作った重要作曲家です。
何度か書いていますが、エマヌエルは父バッハからも大きな影響を受けつつ、父の世界観には縛られず、どちらかというと父の親友でもあったテレマンというポピュラー志向で常に時代の先端を行った作曲家の後継者でもありました。
彼は父の影響もあり、たくさんのチェンバロ協奏曲を書いています。その中ではあまり有名ではありませんが、私はこのホ長調協奏曲が好きです。
第1楽章のテーマは一聴してわかるとおり、低音が下降音階のコテコテコード進行です。これって、日本人大好きですよね。最近ユーミンのライヴを観たのですが、冒頭にこのコード進行を持ってくる曲が多いのに驚きました。それを感じさせない旋律やのちのコード展開を作る才能があるのですね。
前古典の時代は、エマヌエル・バッハに限らず多くの作曲家がこのパターンを多用しています。そういう意味では、もっと日本人が聞いてほしい時代ですね。
演奏はドイツの女流キーボーディスト、クリスティーヌ・ショーンシャイムとベルリン・バロック・カンパニー。
ショーンシャイムの演奏はいつもながら素晴らしいのですが、1パート一人のオケがいいですねえ。
2楽章は、いかにも前古典という感じのドラマチック(過激)な曲想ですね。バロック期に完成を迎えたポリフォニー音楽と、そこから生まれた基礎的和声構造からの解放です。
3楽章はやはり、この時期によくある「活発さ」の表現。疾風怒濤の時代とも言われますね。勢いと華やかさ。これはバロック後期からの伝統とも言えますし、古典派以降の最終楽章につながる新しい価値観の萌芽とも言えましょうか。
この時期のチェンバロ協奏曲は、フォルテピアノで演奏されることもありました。実際、ショーンシャイムも両方を使い分けてレコーディングしています。そして、チェンバロの時代は終焉を迎えます。それが復活するまで、100年以上かかります。完全に忘れ去られたので、復活にも困難が伴いました。演奏法なども含めて完全復活するにはさらに100年の時を要するのでした。
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