CANON→UNION
今日のネタは案外深いですよ!w
あまりにも有名なパッヘルベルのカノン。この親しみやすいコード進行は、「カノン進行」と呼ばれ、現代のポップスでも頻繁に使われています。特に日本人派大好きですよ。
まずはそのパッヘルベルのカノンを聴いてみましょう。せっかくですから、当時の演奏様式に近いものを。速いですよ〜。
このムジカ・アンティクヮ・ケルンの演奏、今でも新鮮ですよね。大好きです。
さて、このある意味コテコテのコード進行( I - V - VI - III - IV - I - IV - V)ですが、日本人は大好きすぎて、世界でも類を見ないほどにこれを進化させてしまいした。
もちろん、そこには、日本人の複雑な感性も関わっています。すなわち、明治以前の音楽に対する感覚、つまり、純粋な和声に対する違和感、抵抗感です。
そう、古来の伝統的な日本の音楽は、西洋和声的ではありませんでした。どちらかというと、そういうものに抵抗を感じていた。純邦楽が和声的に作られず、また演奏されなかったことは、なんとなくわかるでしょう。
実際、明治時代に西洋音楽が流入してきたとき、その和音(たとえばドミソ)を聴いた日本人の多くは吐き気を催したと言われています(ちょっとわかる気がする)。
黒人もそうで、彼らは結果としてコードとしての「不協和音」やメロディーとしての「非和声音」を好み、たとえばジャズを生み出し、白人の音楽を凌駕していきました。
日本人も(やや乱暴に言うと)それと同様な方法で、新たな「コテコテ」を生み出していきました。
その一つの現代的極点が、この曲だと思います。今日長女が聴いていた歌です。大石昌良さんの作品「UNION」。
この曲全体の基本は実は「カノン進行」にあります。特にサビ部分。一見(一聴)そうは聞こえないかもしれませんが、これを聴いて感じる「いいなあ!」感は、その基本とその絶妙な変化にあります。
それに気づいた、現代のモーツァルト(?)「ゆゆうた」くんの興奮状態を見てみましょう(笑)。
ゆゆうたくんに言わせるとこれは「イキ過ぎコード」だそうで(わかる!)、日本人ならではの「カノン進行」に対する愛の表現ですよね。
カノン進行がいかにしてこの変態的かつ官能的な「イキ過ぎコード」進行になるのかを解説してくれている動画がありました。
ふむふむ、マニアックだ(笑)。なるほどですね。この世界観は日本独自のものです。この世界って、いわゆるアニソンにおける「新しいコテコテ感」そのものですよね。
ある意味、こういう響きの世界が、「日本っぽい音楽」と認知されているようで、これはこれでたしかに日本人の「純粋和声嫌い」と「細部にこだわる職人性」の賜物だと言えそうです。
ちなみに、冒頭のカノンの演奏はバロック・ピッチなので現代より約半音低い。すなわち今の感覚ですと、変ニ長調になり、偶然か必然か、UNIONと同じ調になっております。
つまり、速度を調整すれば、二つの曲は350年の時と数万キロの距離を超えて重なり合い、響き合うのでありました。面白いですね。
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