『光を追いかけて』 成田洋一監督作品
昨日、主題歌を紹介いたしましたこの映画。いろいろ心にしみる作品でした。
まずリアルな秋田の今をとらえているところ。秋田の農村事情はカミさんからよく聞いています。
カミさんの生まれ育った県南の山間地域でも、廃校、破産、夜逃げ、自殺は残念ながら日常的です。義父は長く農協の職員でしたから、闇の部分もたくさん見てきたと言います。
一方、そうした現代的現実を覆う、秋田の「モノノケ」的世界、すなわち言語化(コト化)の難しい古来の霊的次元を、UFOというまさに天から飛んでくる unidentified な object で象徴していたのは素晴らしかった。
これはたしかに外国の皆さんには魅力的に映るかも。そう秋田って、土方巽もそうですが、東京を飛び越えていきなり世界というところがあるんですよ。それでいいと思いますし、秋田の人たちもそういう発想を持ってもらいたいかなと。
方言と共通語の使い分け方にも、土着のモノと都会のコトの境に揺れる心が上手に表現されていて面白かった。
ちなみに、カミさんはネイティブなので、役者さんの秋田弁がホンモノなのかニセモノなのか、瞬時に峻別していました(笑)。
それからなんというか、そういった地方性を超えてあまりにも強烈にノスタルジックだったのは、中学時代の「女性」観、いや女性「感」でしょうかね。
たしかに思春期になって異性を意識すると、突然「女子」が「女性」になって、それはすなわち「男子」からすると、「宇宙人」になるっていうことなんですよね。
どういう生態なのか、どうやってアクセスすればいいのか、まさに「未知との遭遇」体験になるわけです。
多くの青春映画がそうであるように、この映画も監督自身のそういった体験のノスタルジー(絶対に取り戻せないモノ)から創造されたのでしょう。
ちょっと思い出されたのは、違ったスタイルの「宇宙人」とのアクセスを描いた「この窓は君のもの」でした。屋根に登るシーンが共通だからでしょうか。そうそう、この作品で主演した榊英雄さんは、のちにあの頃の「純粋さ」を失って騒ぎを起こしましたね。それもまた象徴的です。
あと最後に、意外にリアルだったのは、生駒ちゃん演じる先生でした。現場でたくさん見てきましたよ。経験が浅くてダメダメな若い女性の先生たち。
心がこもっていない。こめ方がわからない。結局生徒自身の力で問題が解決してゆく…いや、実はそういう方が子供たちは成長したりするのです。つまり、逆にベテランこそはまる罠があるということです。
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