アナザーストーリーズ 『戦後最大のヒーロー 力道山 知られざる真実』
昨年6月録画を失敗して見のがしてしまった番組の再放送がありました。
プロレスファン仲間から連絡があって、このたび見ることができました。私以上のプロレスマニアの彼も、この番組は素晴らしかったと絶賛していましたが、なるほどなかなか深い内容でしたね。
かつて統治下にあった朝鮮の英雄が、敗戦国となった日本の英雄に変身して、戦勝国アメリカをぶっ倒すという、まさに物語性に富んだストーリー。
その影を背負ったのは、日本のお家芸柔道の鬼、木村政彦。
力道山の出自について、次男の百田光雄さんと、同胞として可愛がられたという張本勲さんの受け止め方が違うのは当然。まさにいろいろな視点があるということであり、そうした各自の物語の複雑に重なりあったものが「歴史」の本体であるということでしょう。
あまりにすっきりしたストーリーには注意だとも言えます。そこにはまる人を陰謀論者と呼びます。
俯瞰すると、番組で語られていたとおり、力道山がテレビ産業の興隆を生み、日本人のコンプレックスを払拭し、のちの日本の高度経済成長のきっかけを作ったのは事実です。
その間、祖国は分断され戦禍に見舞われていたわけですし、それ以前に朝鮮人として差別を受けていたわけですから、力道山は日本に対して「仇を恩で返す」というある種宗教的な、聖人的な生き方をしたとも言えます。
それは一方で祖国からの批判につながる可能性があったにもかかわらず、実際はその逆でした。ある国にとっての英雄は、ある国にとっての怨敵となるのが普通です。そこが力道山のすごいところであり、歴史的なヒーローたる所以であると思います。
長い時を経て、木村政彦に対する評価も大きく変わりました。番組にも出演していた増田俊也さんのおかげでもあります。彼の労作について、私も記事を書いていました。
この11年前の記事を読むと、自分もいろいろ揺れていたなあと、懐かしく思い出されます。プロレスと総合の間で苦しんでいたのですね。
あれから時が経って、そのあたりもいつの間にか俯瞰できるようになりました。人は成長するものだあ(笑)。
番組中、村松友視さん(高校の大先輩です!)が、語っていた「虚実皮膜の間」こそ、二元論的対立を超越する「物語的(プロレス的)技術」なのですね。
そうそう、私とは視点や過程は違えども、やはりその葛藤を乗り越えた有田哲平さんがが、最近いい動画を上げていました。高山vsフライかあ。なるほどですね。
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