『バッハと初期のピアノ』 ルカ・グリエルミ
いろいろと忙しいので、音楽の紹介を。
お父さんバッハが晩年、ジルバーマンやクリストフォリのフォルテピアノに触れていたことは確かです。
学問的には、実際にどのような楽器でどんな曲を弾いたかは明らかではありませんが、当時発明され実用化された新しい「ピアノ(弱音)」が出せる楽器に大いなる関心を寄せていたことは確かです。
弱音と言えば、バッハは、ほとんど自分にしか聞こえない(あるいは指に伝わる振動しかない)クラヴィコードという簡素ながら奥深い楽器を愛していました。
そんなバッハが、チェンバロよりもクラヴィコードの発展型と言うべきフォルテピアノで様々な表現を試したことは間違いないでしょう。
現代のピアノは、その名前に反してフォルテ側に大きく振れた楽器となってしまいましたが、そのおかげ(?)もあって、ある意味「ピアノ」のコントロールこそ高い技術と精神性を要求するようになり、たとえばキース・ジャレットのような優れたピアニストを生むに至りました。
さて、先ほど書いたように、バッハがどんな楽器でどんな曲を弾いたかは妄想するしかないのですが、この録音はかなり私の妄想に近い音を奏でくれています。
イタリアの演奏家によるバッハですが、とても内省的で落ち着いた演奏だと感じました(って偏見ですね)。
どの曲が、ジルバーマン、クリストフォリ、古風なクラヴィコード(という新しい楽器)かは音で判断するしかないのですが、そんなことを想像しながら聴くのも楽しい。
なるほどと思ったのは、無伴奏ヴァイオリン・ソナタをクラヴィコードで演奏していることです。かなりの確率であり得ることですからね。
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