『くちびるに歌を』 三木孝浩監督作品
夜、家内と長女が2000〜2010年代のJ-POPのヒット曲をYouTubeでどんどんかけ、私がリアルタイムでキーボードを弾きながら、コード進行を中心に楽曲解説しました。
酔っ払っていたので実にテキトーでしたが、いろいろと面白い発見がありました。
その中で、再確認したのは、聴く方も作る方も歌う方も、とにかく「中学の合唱」が原体験になっているということでした。
これについては、実際現場で「中学の合唱」をに触れる機会がたくさんありましたから、そのたびにこのブログにも書いてきた記憶があります。
高校の先生だけをやっていた時は、けっこう「中学の合唱」とか「中学の演劇」とかいう特殊な文化を半ばバカにしていたようなところが自分にはありました。若気の至りならぬバカ気の至りでしたね。
実際、中学生たちの純粋な魂に触れると、大人になってから知った「合唱」や「演劇」にはない、たしかに心を打つモノ(なにか)があることを教えられました。
そして、自分の中にも、そうした純粋な魂(もしかするとそれを「青春」というのかも)への強烈なノスタルジーがあることを確認しました。
そういう思いに立つと、日本のガラパゴス化した(悪い意味ではありません)音楽事情にも、一つの大きな意味を見いださずにいられないわけです。
この映画はそうした日本人全体のノスタルジーの原点を「中学の合唱」を通じて、上手に表現してくれていると感じます。
2000年代、2010年代のJ-POPのMVに学校のシーンが多く出てくるのは偶然ではないでしょう(あれほど長いドラマパートを持ったMVが世界にあるでしょうか)。
非常に単純化し、陳腐に説明するなら、コード進行的には中学の合唱曲の多くがカノン進行(あるいはその派生としてのG線上のアリア進行…すなわちベースラインがドシラソと音階的に下がってくる)が使用されているという事実(この映画の「課題曲」である「手紙~拝啓十五の君へ~」 も例外ではない)。
もう一つ、これは合唱曲にはあまり使われませんが、中学生くらいになるといわゆる「胸キュン進行」(意図的にソに♯をつけて平行短調にプチ転調する)を体験的に理解できるようになるということがあります。すなわち、「切なさ」を味わうようになるということ。
この二つのコテコテ要素が、日本のポップスには異常に乱発されるのです。外国では、それはやりすぎるとむず痒くなるそうですが。
逆に言うと、その二つの要素を上手に盛り込むと「売れる」曲を作ることができるということです。これは2020年代になっても変わっていませんし、これからも続くでしょうね。中学の合唱文化が廃れたり変容しないかぎり。
そういう視点でこの映画を観ると、大人になってからの「切なさ」の原点が15年前の中学生の自分にあることが分かるでしょう。
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