現代思想2021年5月号 特集=「陰謀論」の時代
私が陰謀論を批判すると、お前こそ陰謀論者ではないかと言われます。たしかにそうです(笑)。
ただ、私のいう「陰謀」はまさに「陰」で行われており、ほとんど情報として目に触れることができません。
逆にいわゆる「陰謀論」は、特にネットにおいてはほとんど無限に再生産されており、そういう意味では全く「陰」ではなく「陽なた」的存在です。
つまり、「○○の陰謀」などと巷間語られる陰謀は、陰謀などではなく陽謀ということであり、それがなかなか消えないということは、一つには「そんなものない」可能性があり、また一つには「一般的な政策や企業の経営方針と同じ」次元のことである可能性があるわけです。
おそらくその両方が入り組んでいるのが、「みんなが知っている」「ブームになっている」という自己矛盾を抱える「陰謀論」なのでしょう。
では、なぜこんなに陰謀論が流行るかというと、もう説明する必要もないでしょうが、現代人はさまざまなメディアに触れる機会があり、現実社会とフィクションの区別ができなくなっているということでしょう。
かつての「物語」はあくまでも「物語」であって、その存在価値は大きかったとはいえ、あくまで「生きる」「死なない」ための現実生活からは絶妙に遊離した存在でした(信仰も含めて)。
今、人類はある意味豊かになり、ある意味生命の維持が保証されるようになったため、現実生活の方が物語に近づいていっているのです。
そして、そこに生じるのは、なんと「生命維持の危機」への願望なのです。このグローバルな情報社会においては、その願望は目に見えない敵の想定という形で実現されます。
いわゆる「意識高い系」の人たちは、ネットのクソ情報を閲覧しまくることをもって「自分は勉強している」と勘違いします。そして、皮肉なことにより原始的、無知的な「勧善懲悪」説に陥っていきます。そして、もちろん、自分を「善」の側に立つヒーロー、ヒロインに位置づける。
そして、この世界を「賢い善」と「賢い悪」、そして「愚かな無知」とに分断し、「不安」「危機感」という「安心」を得ているのです。
こうした分断を生む「愚かな陰謀論」こそ、「賢い悪」の「陰謀」なのかもしれないと、一歩進んだことを言う人も現れてきますが、前提自体が「愚か」なので、全く的を射ていませんね。
そんなに世の中、人間、宇宙は単純ではないのです。
多くの伝統的宗教も、世を「善」「悪」「愚」に分断して(単純化して)成立、発展してきました。そういう意味では、現代の「陰謀論」は宗教の無力化から生まれた新しい宗教とも言えましょう。
すなわち、私が言いたいことは、「分かりやすいものには気をつけろ」ということです。それに騙されるのは、不本意にも「愚」そのものですからね。
私の周囲に見える「陰謀論」たちは、すべて分かりやすすぎます。マンガやアニメの方がずっと複雑で本質的なくらい。
というわけで、そういう「愚」がどのように発生して蔓延するかを、あえて「賢」の立場から(あるいは「賢」のふりをして)冷静に(あるいは冷静なふりをして)批判的に論じているのが、この特集であります。
インターネットの動画ばかり見ている人たちは、こういう重い本は読まないでしょうから、この本がワクチンにはなりえないでしょう。あるいは、それこそ反ワクチン的に、こうした「賢」的世界は攻撃対象にすらなるかもしれませんね。
困ったものです。
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