『ウルトラ音楽術』 冬木透・青山通 (集英社インターナショナル新書)
先日観た「シン・ウルトラマン」、音楽はなかなか良かった。
宮内國郎のオリジナルの音楽と鷲巣詩郎の新曲のバランスがよく、それぞれのシーンで「懐かしさ」と「新しさ」に基づく興奮を味わうことができました。
しかし、ウルトラシリーズの音楽と言えば絶対にセブン。つまり、冬木透さんの音楽ですね。
青山通さんによるウルトラセブン&冬木透論については、以前こちらに書きました。
そして、いよいよお二人がコラボして、より核心に迫る良書が完成しました。
いちおうクラシック畑にもいるワタクシとしては、冬木透、そして蒔田尚㚖としての音楽歴や音楽観、そしてお好みを知れて嬉しかった。
キリスト教音楽家としての蒔田尚㚖もしっかり評価したいですね。
ご自身も書いていますが、代表歌曲「ガリラヤの風かおる丘で」は、いかにも蒔田さんらしい優しい愛に溢れた佳曲です。この親しまれている国産賛美歌の作曲者が、ウルトラセブンの音楽の作曲者だと知らない人も多いのではないでしょうか。
パイプオルガン大好きな私としては、蒔田さんのオルガン作品をたくさん聴いてみたいところです。なにしろ、実相寺昭雄映画「曼荼羅」の音楽でしか聴いたことがないので(!)。
この本全体を通じて印象に残ったのは、想定外の仕事や、自分では納得いかなかった仕事が、のちに高く評価されるということ。人生とは案外そなんものですね。自我が強すぎるとそこに違和感を抱いたり、不快に思ったりしてしまうのでしょうが、冬木さんは全然そんなことなく、逆にそこに価値を見出し楽しんでさえいるように感じました。
それはある意味自分の中での満足がないとも言えるわけで、それが結果として自身の進化を促しているのかもしれません。そう考えると、一番怖いのは、自分でも満足した創造物が他者にも受け入れられることかもしれません。それは行き止まりを意味するのです。
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