イキる
最近、若者を中心に「いきる」がよく使われていますよね。いえ「生きる」ではなく「イキる」です。「あいつなんであんなイキってんの?」的な。
昨日、NHKのアナザーストーリーズで三島由紀夫やってましたけど、もうあの頃すでに若い自衛官は演説する三島に対して「あいつなんであんなイキってんの?」と思ったことでしょう。
そういえば、三島に関してこんな記事も。なるほど自分で分かっていたのか。やっぱり無理して「イキって」しまったと。私はそんな三島が好きです。
さて、「イキる」は「意気がる(粋がる)」からとも言われますが、古語にも似た意味の「いきる」という動詞があります。「いきり立つ」という複合語ではずっと使われてきましたよね。
漢字にしますと「熱る」。まさに「熱くなる」。現代の若者の言う「イキる」も、なんとなく声(や態度)が必要以上にデカく暑苦しい感じです。
古い日本語をじっくり調べますと、「IK・」系の言葉には(それこそ)「いきおい(いきほひ)」があることが分かります。エネルギッシュなのです。
生きる(生く)、息、勢い、行く、怒り、意気、熱(いき)る、いきなり、雷(いかづち)、軍(いくさ)…。
そう言えば、以前(10年前でした)「怒り」=「生かり」という記事を書きましたっけ。そこにもある程度書きましたね。なるほど「起きる」との関係も書いてあって参考になりました(笑)。
お産や排泄の時の「いきむ」も同源でしょう。やっぱり熱くなって顔が赤くなっているイメージありますよね。
四段活用の「生く」が現代に近づくにつれ「生きる」という上一段活用に変化したためか、四段活用「熱る」は「熱れる(いきれる)」という下一段活用に追いやられました。そして、「草いきれ」という特殊な名詞として現代に残ることになったのも面白いですね。
いずれにせよ、日本人が古来持っているそうした「熱い」イメージが、現代に蘇ったということでしょう。
ちなみに江戸時代の「粋」ももともとはこの系統。歴史的には「熱」→「意気」→「粋」という流れがあったものと思われます。もともとは遊郭などでの「勇気」「男気」を指す言葉ですから、やはりルーツは「熱」「エネルギー」でしょう。
最後に、今思いついたのですが、「いきがあがる」って両極端な意味になりますね。「息が上がる」と「意気が揚がる」ですから。
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