龍神が報護する国 日本
昨日、徐福や、富士山=蓬莱山の話を書きました。
徐福の物語はすでに史記によって日本にもたらされていましたが、富士山を蓬莱山に比定し、徐福がそこに住み着いて秦氏の祖先となったという伝承は、973年に刊行された中国の書「義楚六帖」が初出です。
その情報を義楚という僧に伝えたのは、入宋していた日本の僧寛輔です。958年のこと。
寛輔は927年には入宋していますから、それ以前にすでにその情報は日本の一部で語られていたのかもしれません。
「義楚六帖」の「日本国」の後半部分を読んでみましょうか。
又東北千余里有山。名富士亦名蓬莱。
其山峻三面是海、一朶上聳。頂有火燒。
日中上有諸宝流下、夜則却上。常聞音楽。
徐福止此謂蓬莱。至今子称皆曰秦氏。
彼國古今無侵奪者。龍神報護。
法不殺人、爲過者配在犯人島。
ワタクシ流に意訳してみます。
また(都の)東北千余里に山がある。富士という名である。また蓬莱ともいう。
その山は険しく三方は海に面し、山々の上にそびえている。頂上には火焔が見える。
日中は山上にある諸々の宝が流れ下り、夜にはそれらが山上に帰る。常に音楽が聞こえる。
徐福はここにとどまり、ここを蓬莱と言った。現在その子孫は皆秦氏を名乗っている。
その国(日本)は今も昔も侵略されたことがない。龍神が守っているのである。
その国の法は人を殺さず、犯罪者は島流しとする。
富士山についての記述も興味深いですね。そのあたりについては、宮下文書の伝承とからめていつか書きましょう。
今日は、その富士山や徐福に関する部分のすぐあとに出てくる、興味深い記述に注目してみようと思います。
最後の2行。日本は龍神が守っているので侵略されたことがないという部分です。
ご存知のとおり、中国では古代から龍神を非常に重視してきました。ある意味国家、王、国民の象徴的な扱いですよね。
その龍神が日本を守っていると。
日本人が語った話としてですが、中国の僧がそれを公的に引用して公刊しているというのは珍しいことではないでしょうか。
そして、龍神のおかげで侵略されたことがないと。これは侵略の歴史に満ちたかの国に対しては、ある意味挑戦的な言葉とも言えましょう。
その証拠として、次の文章にも注目です。日本では死刑がなくて島流しであると。これまた死刑、一族根絶やしが当たり前のかの国からすると不思議なことだったのではないでしょうか。
侵略もなく死刑もない…蓬莱という理想郷につながる面白い記述であると思います。
日本人である寛輔がそのような内容を伝えたというのも興味深い。もちろん母国を美化して伝えたのでしょうし、それがたとえ針小棒大だったとしても、「針」あっての棒でしょうから、当時の日本人にはそういう自己イメージがあったのでしょう。というか、大陸の実態を知って、我が国は平和だなあと実感したのでしょうね。
はたして、その伝統は今でも引き継がれているのでしょうか。侵略したり、侵略されたりもありましたし、死刑もありますからね。
では、未来の日本はどうなのか。「義楚六帖」の「日本国」の冒頭には、「日本国はまたの名を倭国という」とあります。
「倭」という文字は卑字だと言われますが、本当にそうでしょうか。「倭」には自己中心的ではない、謙虚だという意味があるのですよ。
そのあたりについても、いつか書きましょう。
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