テレマン 『パッサ・テンポ』
テレマンの隠れた名曲。ソロ・ヴァイオリンを伴った管弦楽組曲イ長調の中の1曲です。
「Passa tempo」という楽章名が付されていますが、これはどういう意味なのでしょうか。現代イタリア語では「passatempo」は「慰め」とか「癒やし」とか「気晴らし」のような意味です。
また、古い英語ですと「過ぎ去った時」のような意味だとか。
テレマンの組曲はイタリアやフランス趣味で書かれています。ですから表面的には「気晴らし」的な意味でこの言葉を使っているのだと思います。
一方、聴いてわかるとおり、この曲は三拍子の舞曲、パッサカリアやシャコンヌのような印象を与えます。ただ、低音(すなわち和音進行)はいちおう循環を基本としていますが、時々自由に展開していますよね。
つまり「パッサカリアのテンポで」(パッサカリア風だけどパッサカリアじゃないよ)という意味も含ませたのではないでしょうか。洒落というかダブルミーニングというか。
いずれにせよ、こうして循環系の舞曲の伝統が次第にその束縛から解き放たれ、古典派以降の音楽につながっていゆくわけです。
テレマンはバロック音楽を代表する作曲家としての名高いわけですが、実は非常に進取のスピリットがあった人ですので、前古典派や古典派、さらにはロマン派を招来した役割についても評価すべきでしょう。
楽譜を見ると、まさに気晴らし的にバロックの語法から解き放たれているのが分かります。全体としては楽章も「今風」ですし(序曲、ディベルティメント、メヌエットⅠ・Ⅱ、パッサ・テンポ、テンポ・ディ・ギガ)。
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