« 『都道府県別 にっぽんオニ図鑑』 山崎敬子(ぶん)・スズキテツコ(え) (じゃこめてい出版) | トップページ | アルビノーニのアリア »

2022.04.25

テレマン 『パッサ・テンポ』

 

 レマンの隠れた名曲。ソロ・ヴァイオリンを伴った管弦楽組曲イ長調の中の1曲です。

 「Passa tempo」という楽章名が付されていますが、これはどういう意味なのでしょうか。現代イタリア語では「passatempo」は「慰め」とか「癒やし」とか「気晴らし」のような意味です。

 また、古い英語ですと「過ぎ去った時」のような意味だとか。

 テレマンの組曲はイタリアやフランス趣味で書かれています。ですから表面的には「気晴らし」的な意味でこの言葉を使っているのだと思います。

 一方、聴いてわかるとおり、この曲は三拍子の舞曲、パッサカリアやシャコンヌのような印象を与えます。ただ、低音(すなわち和音進行)はいちおう循環を基本としていますが、時々自由に展開していますよね。

 つまり「パッサカリアのテンポで」(パッサカリア風だけどパッサカリアじゃないよ)という意味も含ませたのではないでしょうか。洒落というかダブルミーニングというか。

 いずれにせよ、こうして循環系の舞曲の伝統が次第にその束縛から解き放たれ、古典派以降の音楽につながっていゆくわけです。

 テレマンはバロック音楽を代表する作曲家としての名高いわけですが、実は非常に進取のスピリットがあった人ですので、前古典派や古典派、さらにはロマン派を招来した役割についても評価すべきでしょう。

 楽譜を見ると、まさに気晴らし的にバロックの語法から解き放たれているのが分かります。全体としては楽章も「今風」ですし(序曲、ディベルティメント、メヌエットⅠ・Ⅱ、パッサ・テンポ、テンポ・ディ・ギガ)。

楽譜

|

« 『都道府県別 にっぽんオニ図鑑』 山崎敬子(ぶん)・スズキテツコ(え) (じゃこめてい出版) | トップページ | アルビノーニのアリア »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『都道府県別 にっぽんオニ図鑑』 山崎敬子(ぶん)・スズキテツコ(え) (じゃこめてい出版) | トップページ | アルビノーニのアリア »