ドミトリー・ボルトニャンスキー(ウクライナ出身18世紀作曲家)の器楽曲
ロシア音楽の祖とされるボルトニャンスキー。彼は今のウクライナ出身です。少年時代からロシア帝国サンクトペテルブルグにて音楽に従事し、師匠のガルッピに帯同してイタリアで本場の音楽を学び、ロシアに戻ってからも多くの「ヨーロッパ音楽」を作曲しました。
ロシアは長いこと大衆音楽を禁止していましたが、18世紀に入り、女帝の時代が来ると急速にヨーロッパの宮廷音楽を輸入しました。そこで活躍したのがボルトニャンスキーというわけです。
時代的にはバロック音楽のあと古典派の手前、いわば前古典派的な音楽を作っていますね。しかし、ヴィオラ・ダ・ガンバを使うなど、古き良きヨーロッパ宮廷音楽の空気も残しているのが面白いですね。遅れてきたロシア宮廷音楽文化の趣味が反映したものでしょうか。
全体としてはイタリア的な明るい色調の音楽であり、寒く暗いロシアにあって宮廷では陽光あふれる南国イタリアへの憧れも感じられます。
そんな西欧かぶれに対し、民族音楽大好きだったかの伊福部昭は「安価にして軽薄なイタリアまがい」と酷評しているとのこと。それもわかる気がしますし、現在のウクライナと西欧、そしてロシアとの関係を考えるとなんとなくシャレにならない気さえします。
とは言え、普通にいい曲ですよね。日本ではほとんど演奏されることはありませんが、楽譜も手に入りやすいので、ぜひ演奏していただきたいところです。
まあこのたびの戦争がなければ、私もボルトニャンスキーの音楽なんて聴かなかったことでしょう。なんとも因果なことです。
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