棚頭の仁王像
旧甲州街道ネタに戻ります。
先日、「独り初詣」で訪れた野田尻棚頭の八幡神社(旧天鼓山東林寺)にある謎の仁王像を紹介します。
最初ここを訪れたのは今から30年くらい前でしょうか。その頃、この仁王像はまさに「バラバラ事件」状態でした。頭、胴体、手足が門の中に散乱していて、それはそれでなんとも言えない怖い、いやある種滑稽な雰囲気を放っていました。その後2001年に完全修復され、今は立派に立ち並んでいます。
あれって、もしかして「廃仏毀釈」の時のまんまだったのでしょうか。あんなに不自然にバラバラになることはないでしょうから。そう、たとえば上吉田の冨士浅間神社にあった、月江寺持ちの仁王像は市中引き回しの刑に遭い、その後薪にされてしまったと聞きます。
日本史上最も苛烈な宗教弾圧はキリシタン弾圧や大本事件かと思いきや、実は明治維新前後の「廃仏毀釈」だったのですね。全くひどい話です(平田篤胤のせいみたい言われますが、そこはちょっと違うのではないかと思います)。
もし棚頭の仁王像がその「現場」だとしたら、修復しない方が良かったのかも。あまりにきれいになってしまいました。
実際、今は八幡神社となっている堂宇は明らかに寺院の造りです。かつては東林寺というお寺でした。山門には立派な「天鼓山」の額もかかっています。八幡神社というのが安易と言うかなんと言うか(苦笑)。
東林寺は、野田尻の大きなお寺熊埜山西光寺の末寺でした。西光寺さんは現在臨済宗建長寺派ですが「くまの」と称するところから分かるとおり、かつては真言宗で修験道とのつながりも深かったお寺です。
その西光寺さんの末として、棚頭の八幡神社から東に少し離れた桑久保地区に「東林寺」さんが現存します。棚頭が旧寺地だったのでしょうか。ともに本尊は薬師如来様ですし。
さて、その修復された棚頭の仁王像ですが、まあとにかく下の写真を見てみてください。仁王像がなんでこんな山の中の急斜面に立っているのか、全く不思議です。
正面はアクリル板がはめられていて、反射のためよく見えません。灯りをつけるスイッチがあったり、センサーライトがついたり、まあサービスと言えばサービスなのでしょうが、ちょっと微妙な雰囲気になっております(笑)。
境内に立つ石碑を見ますと、ここがとんでもない僻地であったのに、ようやく電燈線が引かれたと書いてあります。そのおかげで仁王像も今ライトアップされているわけですね。
その他、写真を見てみてください。結構坂道がきついのですが、近くにいらした折には一度訪ねてみる価値はあるかと思います。仁王様の裏側には、「おびんづる」像が座っています。目の病気にお利益があるとされていたとのことで、かなり撫でられたのか、目が潰れてしまっているのは何とも言えぬ歴史民俗の悲哀を感じさせますね。
なお、熊にはご注意ください。
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