『世間胸算用』 井原西鶴
大晦日と言えば、井原西鶴の「世間胸算用」でしょう。
江戸時代の「大晦日」を描いた作品です。
「大晦日」、「おおみそか」ではなく「おおつごもり」と読みます。
言うまでもないありませんが、明治維新以前は太陰暦。つまり、三十日(みそか)は必ず新月の周辺でした。つまり月のない闇夜。その最後の「グレート」な三十日が「おおみそか」ということです。
「つごもり」は「月籠り」。新月周辺ですから月は籠ってしまいます。その次の日、つまり一日は「ついたち」、すなわち「月立ち」です。「立つ」は「現れる」という意味です。
ちなみに太陰暦では、毎月十五日は満月周辺です。十五夜ですね。
で、この「世間胸算用」の出版された1692年の元日は日食がありました。そのことが書かれています。その年、元日は新月で、午後の1時過ぎから日食があったのです。
日食は凶兆と考えられていました。この胸算用の冒頭にもありますが、「アマテラスの岩戸ごもり」と重ねられたのでしょうね。実際1692年は、日本では不作と大雪、そしてヨーロッパでは数年続く大飢饉がありました。
さて、この「世間胸算用」のテーマは「借金取り」。そう、当時の日本経済はとても現代的で、ほとんどの買い物は「クレジット」。つまり、後払いだったんですね。で、だいたい大晦日やお盆に支払い(取り立て)があったのです。
借りている方はいろいろと知恵を使って支払いをしなくて良いようにする。取り立てる方もそれなりの知恵を使う。そういう知恵比べの面白さは、ある種の「芸」となっていて、つまり、双方それを楽しむような文化があって、それが文学になったわけですね。江戸時代らしい成熟した文化です。
これって映画化、ドラマ化されていませんよね。現代的にアレンジして、オムニバス的に編集すると、めっちゃ面白いと思うのですが。どなたかやりませんか。じゃないと私がやっちゃいますよ(笑)。
というわけで、今年の「おおつごもり」は久しぶりに井原西鶴を読んでみたのでした。皆さんもぜひ。
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