『宗教は現代人を救えるか』 佐々木閑・小原克博 (平凡社新書)
仏教の視点、キリスト教の思考
花園大学の佐々木閑さんと、同志社大学の小原克博さんの対談本。
読みやすく、そして大変刺激になる本でした。
気鋭のインド仏教学者とキリスト教神学者のお二人だけあって、現代的な視点での語らいが多く、まさにお二人が「現代人」の救済を望んいでいるのだなと感じることができました。
とは言え、では「宗教は現代人を救えるか」という問いに対しての答えが出たかというと、なんとも煮えきらず、正直わからないままで終わっているようでした。
それはそうでしょう。釈迦の時代もイエスの時代も、あまりに遠くなってしまいました。
先日、山川宗玄老師との対話の中で、「対機説法とは、その時代に合わせた方便による」という意味もあることを教えていただきました。
結局それですよね。あまりに原点回帰、原典主義になると、それは現代に対して最大効果を上げるものとはならない。音楽でもそうです。極端なオリジナル主義は、短期的な「物珍しさ」に終わってしまうことがあります。
では、どうすれば良いのか。
宗教も、たとえば音楽と同様に、古いコトの上に新しいモノを加えていくことが必要なのでしょう。
それがその時代的にいえば、浄土真宗であったり、プロテスタントであったりしたわけで、しかしそれらもとっくに昔のコトとなってしまった限り、やはりそれらの誕生と同じくらいのエネルギーをもって、全く新しい宗教が生まれてもいいのではないかと思います。
出口王仁三郎の大本に象徴されるような近代の新宗教には、ある意味そういうエネルギーもありました。しかし、それでさえ、もう歴史になりつつある。すなわちそれ自体そのままでは現代に意味を持ち得なくなっているわけです。
ある意味20世紀は、資本主義という(この本で言うところの)「買え買え教」が世界中に布教された時代でした。では、21世紀はというと、どうでしょう。まだ「買え買え教」が続いているのでしょうか。
そこで私は、仲小路彰の哲学に興味を持つのです。それは過去の宗教の全てを基礎にした、全く新しい宗教であるとも言えます。
仲小路の言説には「これを守りなさい」という「律」や、「こうしなさい」という「行」は感じられません。
また、個人の「悟り」や、個人の「救済」や、個人にとっての「天国」は語られません。
そう、もしかすると「悟り」も「救済」も「天国」も、個人で成し遂げるものではなく、集団の中に「縁起」するものなのかもしれません。
そうしますと、今までの宗教者の多くは大きな間違いを犯してきたということになりますね。
この本を読んでいてそんなことを思いました。そして、やはり、出口王仁三郎から仲小路彰への流れに新しい光を見出すのでした。
そして、自分が新しい宗教を造っちゃおうかなと思ってしまったのでした(笑)。
Amazon 宗教は現代人を救えるか
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