バッハ 『トリオ・ソナタ(音楽の捧げもの)』
最近、「構造」としての音楽に批判的な記事をいくつか書いてしまいましたが、皆さんおわかりのように本当はそういう「音楽」が大好きです。
一方で、その「構造」はある種の「わかりやすさ」でもあって、その「わかりやすさ」に潜む危険というのも感じるようになったわけです。
昨日の山川宗玄老師のお言葉で言うなら、そこに「困難」があるのかということです。
「構造」とは「言語」であるとも言えます。最近の私の傾向は、多分に仏教の、禅宗の影響を受けているわけです。
「構造」や「言語」、そして「音楽」には、「過去の記憶」と「未来の予感」が関与するんですよね。「今ここ」の存在感が薄れているのです。
そういう視点からして「困難な構造」をもつ不思議な「音楽」があります。それがバッハの「音楽の捧げもの」です。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、コト(構造・言語・音楽)を窮めてモノ(非構造・非言語・非音楽)に到達した作品だと思います。
これもまた、修行という「カタ」を窮めて悟り(モノのあはれ)に到達するのと同じです。
おそらくバッハの修行者だったのでしょうね。そして、バッハの残した「言葉(音楽)」は、まさに対機説法として、現代や未来にも生きているのでしょう。
さて、そんな「音楽の捧げもの」の中で最も現実的な楽曲、すなわち楽器指定のあるのがこのトリオ・ソナタ。私も何回か演奏しましたが、本当に弾きにくい。まさに「困難」に満ちています。修行アイテムとしては最高でしょう(笑)。
この演奏では、チェンバロではなくジルバーマンのフォルテピアノが使用されています。不思議な響きになりますね。新鮮な発見がいくつかありました。まさに今に生きている作品です。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- AIで創る「新しいバロック音楽」(2025.05.14)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 『Baby, I Love You』by Suno AI v4.5(2025.05.07)
- 『Tokyo Jazz』by Suno AI v4.5(2025.05.04)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 光明寺さん(小山市)で思う(2025.05.23)
- 榮山寺のカオスとコスモス(2025.05.22)
- 吉野〜南朝の幻影(2025.05.21)
- 『超国宝』展 (奈良国立博物館)(2025.05.20)
- 私的「大鹿村騒動記」(2025.05.18)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 岡崎市円山の神明宮と古墳群(2025.05.24)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 「ドアを閉めます」(名鉄)(2025.05.10)
- 能『杜若』(2025.05.01)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- 乙姫さま降臨(2025.05.26)
- 岡崎市円山の神明宮と古墳群(2025.05.24)
- 光明寺さん(小山市)で思う(2025.05.23)
- 榮山寺のカオスとコスモス(2025.05.22)
- 吉野〜南朝の幻影(2025.05.21)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- 地震と大相撲(2025.03.30)
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 文字を持たない選択をした縄文人(2024.02.14)
- スコット・ロスのレッスン(2024.01.12)
- AIは「愛」か(2024.01.11)
コメント