追悼 野村四郎師
悲しい知らせに、家族で号泣。
観世流シテ方能楽師、人間国宝、日本能楽会会長であり、また私の次女の師匠でもある野村幻雪(四郎)先生がお亡くなりになりました。
最後に舞台を拝見したのは、今年5月29日。まさに究極の芸「鷺」を舞ってくださりました。
その感動については、こちらに書かせていただきました。
あの鬼気迫る命がけの「鷺」からいただいたモノはしっかり今の私の中に生き続けています。
こんな言い方は不遜ですが、あらためて御礼の気持ちをこめて申しますと、正直、あの「鷺」で、私は自分の存在理由というか、自分の存在の基礎が何であるかということが解ってしまったのでした。
本当にありがとうございました。
最後にお会いしてお話させていただいたのは、昨年の晩秋。その時のお話も、文化、芸術、そして人生の本質に迫るものでした。実に有り難い得難いお言葉でした。
その後、不束者の次女の藝大入学を後押ししてくださりました。今、次女は泣きはらしておりますが、しかし、能こそ死者との交流のテクノロジーです。現世で充分悲しんだのちには、ぜひ野村先生に立たせていただいた芸の神髄の入り口から、その深奥へ進み、野村先生のお姿が見えるところまで精進をしてもらいたいと思います。
私個人といたしましても、本当に四郎先生には格別に良くしていただきました。私からの不躾なお誘いに応じてくださり、二度も富士山麓で舞ってくださりました。
また、酒席をともにさせていただいた折には、私の拙い質問にも真摯に答えてくださりました。もっともっといろいろお話したかった…。コロナ禍になってからは、なかなかご挨拶にも伺えなかったのですが、いつも娘に「お父さんはお元気?」と聞いてくださり、ただそれだけでも嬉しく感じ入っていた次第です。
芸に対する厳しさ、すなわちご自身に対する厳しさを持ちつつ、私のような人間にもこうして気を遣ってくださる優しさ、またジャンルを超えた人々との交流や共演など、人間的な大きさ広さを持った先生でした。
この写真は、直会の歓談のあと、突然四郎先生に腕を組まれて、驚きと嬉しさのあまり相好を崩す私です。この写真が、四郎先生のお人柄をよく表していると思います。まさに私にとっては宝物の写真です。
体調が優れないということもうかがっておりましたので、内心心配しておりましたが、こんなに早く帰幽遷化されてしまうとは…本当に残念です。
本当に長い間お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。娘はもとより、私も何らかの形で能楽界に寄与し恩返しできますよう精進いたします。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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