『八月十五日の動乱』 小林恒夫監督・鶴田浩二主演作品
千葉真一さんがお亡くなりになりました。ワクチン接種をしなかったようですね。
このような形で、あの強健な千葉さんが亡くなったことは、なんとも言えなく残念な気がします。
その千葉真一さんが、医師役としてさりげなく出演しているこの映画、宮城事件を描いた作品としては新旧の「日本のいちばん長い日」の陰に隠れて、あまり評価されませんが、実はなかなかの名作です。
フィクションの部分も含め、人間ドラマとして良いバランスだと思いますし、主役の鶴田浩二が目立たないのが良い。
目立たないということで言えば、千葉真一もそう。一瞬しか登場しません。この時33歳ですね。前年にアクションスターとして深作欣二作品などに出演して人気を得ました。翌62年は、この映画も含めて幅広い作品10作以上に出演しています。
さらに言えば、昭和天皇の姿も声も隠されているのも良い。時代的なことからの配慮だとは思いますが、「日本のいちばん長い日」の旧新の天皇表現の変化と結びつけると、時代とともに戦争と天皇の関係が徐々に変化したことが分かります。
公開は1962年。東京オリンピックの2年前。やはり、五輪をはさんで日本の戦後は大きく変わったということですね。
私は五輪の年に生まれましたから、その戦後前期の空気を吸っておりません。よって、こうしていろいろな資料から学ぶしかないのです。
この映画において、玉音盤奪取に失敗した陸軍兵士たちは、ある意味現場にいたからこそ、陛下の御心に打たれて「情」によって終戦を受け入れることになりましたが、現場から離れた多くの人々は、玉音放送を聞いても終戦(敗戦)を受け入れられませんでした。
それを「情」ではなく、「理」によって説得したのが、何度か書いてきた仲小路彰の「我等斯ク信ズ(我等斯ク勝テリ) 」だったのです。
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