『血槍富士』 内田吐夢監督・片岡千恵蔵主演作品
今日は内田吐夢の命日。没後51年になります。
内田吐夢監督と言えば、やはり「飢餓海峡」が抜群に素晴らしいのですが、この「血槍富士」もけっこう好きな作品です。
この作品は1955年(昭和30年)の公開。戦後10年経っていますが、実はこれが戦後復帰第一作。
内田吐夢は戦中、満州で映画製作をしていたのですが、終戦後も満州に残り中国の映画界に貢献します。
あっそうそう、終戦直後、大杉栄らを惨殺した甘粕正彦が満州で青酸カリ自決した現場に居合わせたんですよね。甘粕を慕っていたようですから、大変なショックを受けたに違いありません。
そして、1953年にようやく引揚げ。周囲の監督仲間も大変喜びました。この復帰第一作で、小津安二郎や溝口健二、伊藤大輔、清水宏が企画協力していることからも、それがよく分かります。
そうした期待に応えて、この作品は実に中身の濃い佳作になっています。娯楽としての映画の魅力満載。前半のほのぼのした雰囲気、ユーモア。後半の社会の矛盾に対する批判精神、そして殺伐たるリアルな敵討ちシーン。見事なコントラストですね。
それらが無駄なく、テンポよく展開していく。本当に素晴らしい監督ぶりです。
役者陣も素晴らしい。片岡千恵蔵は言うまでもなく、加東大介、島田照夫、月形龍之介、そして子役として出演している千恵蔵の実の息子と娘も名演技。
小杉太一郎の音楽もいい。最後に「海行かば」が流れるのは、戦中へのノスタルジーなのでしょうか。
主人のために敵の命を奪う。しかしそこには何かしら虚しさが残る。まさに、近過去の戦争の切なさと同じですね。
それから、過度に(意図的に)書割風にされた富士山の味わいがまたなんともよろしいのでした。
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