『(CG版)ドグラ・マグラ』 奇志戒聖 監督作品
今日のNHK「ダークサイド・ミステリー」は「危険な奇書!?“ドグラ・マグラ”と夢野久作の迷宮世界」でした。
私も大学生の時に「ドグラ・マグラ」にはハマりました。自分でも映画化したいなとか真剣に考えていました。
その後、すぐに松本俊夫監督によって奇跡の映画化が実現してしまい、これはかなわないなと自分の夢を諦めて以来、すっかり夢Q世界から遠ざかっておりました。
で、久々に松本版を見ようかと思ったら、ストリーミングにはないことがわかり、代わりにこのフルCG版を見てしまいました。
これって逆説的になかなかいい作品になってますよ。けっこう厳しく評価されていますが、私はそれなりに楽しめた。
2010年のCG、それも低予算の中ですので、ほとんどゲームのグラフィックになっていますが、それが逆に現実味を奪っていて妙味になっている。
もともと原作が虚実皮膜の間を彷徨させるのを目的としているのですから、こうしてあえて中途半端に表現することもいいのではないでしょうか。
もちろん、それが意図したものではなく、技術的、経済的な制約の中から期せずして生まれたものだとしても。
ちょうど昨日、高山良策の「造形」の重みを紹介し、一昨日は「CGには重力がない」という話を書きましたね。この作品を見ると、その意味がよく分かるでしょう。
そう、実は優れた絵画というのも「重力」を描ききっているのです。決して写実的ではない(と言われる)浮世絵も、実は重力に関しては写実的なのです。
また、日本の名作アニメたちもそうです。製作者たちが意識しているかどうかは別として、日本のアニメはある意味写実的なのです。
ところで、このCG版ドグラ・マグラ、時代は近未来だし、ストーリーもかなり端折っているけれど、どこか原作に「写実的」であるように感じるのは、作画的なことではなく、実は人間の心の「重力」をしっかり描いているからでしょう。
そう考えると小説においても、「重力」の表現が重要であることが分かってきますね。
特に「胎児の夢」と「脳髄論」については、現代においてもいろいろと考えさせられます。私の「モノ・コト論」にも深く重く関わってきます。
というわけで、久しぶりに夢野久作を読んでみましょうかね。今は無料で読めますから。
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