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2021.07.09

レオポルト・モーツァルト 『ヴァイオリン奏法』

Th_41tosxrl_sx351_bo1204203200_ 識を覆すことが最近の趣味(仕事)です。

 お父さんモーツァルトの時代にすでに「常識」になっていたこと、それはヴァイオリンにはガット弦を張るということです。

 いや、この常識もここ80年くらいはまた非常識になっていましたが、古楽演奏による古式の復活によって、ようやくまた少し常識に近づきつつあります。

 先日お会いしたヴァイオリニスト、志村寿一さんも、場合によっては一部分だけでも裸ガット弦を張ることがあるとのこと。そういう使い分けが早く「常識」になってくれるといいですね。

 この本には、冒頭ですでにその「ヴァイオリンと言えばガット弦」というような話が出てきます。なんでも、コルダとかコーダとかコードとかいうヨーロッパ語の語源は、ギリシャ語の「内臓・腸」から来ているのだとか。なるほど。

 ですから、お父さんモーツァルトどころか、バロック、ルネサンスの頃にはとっくにそれが常識になっていたようです。

 その前はどうかというと、これが面白い。

 シルクロードを伝って東方から弦楽器がもたらされた頃、その多くに絹弦が張られていたことが想像されるのです。しかし、シルク文化のない西方では、それこそシルクは道を成してしまうほどの憧れの存在。

 結局、絹は全般にどんどん高価になってゆき、しまいには貴族の奢侈品になっていってしまうわけですね。そして、輸入や使用の禁止令すら出てしまう。

 これでは、楽器の消耗品としては使えっこない。それで代替品として、羊の腸の組織を撚った「ガット弦」が開発され普及していくわけです。

 ちなみに古く中国では、絹のストリングを「絃」、その他(ガット・馬の尻尾など)のストリングを「弦」という具合に、字を使わ分けていたという話も聞きました。なるほど。

 で、すっかり忘れられてしまった絹絃ヴァイオリンの響きが奇跡的に復活したのが、今から150年前の極東日本。面白いですねえ。

 こちらにも紹介したとおりです。つまり、逆に極東ではガット弦が高価で希少だったので、しかたなく、三味線や琴の絃、すなわち絹絃を代替品として使ったということなのです。

 というわけで、私は今、ヴァイオリン(族)やガンバ(族)、そしてギターやハープ用の絹絃の開発のお手伝いをさせていただいているのです。

 これが実現したら、レオポルト・モーツァルトさんもこの本を書き換えなければなりませんね(笑)。全然音も演奏技術も変わってくるわけでして。

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