『FAKE』 森達也監督・佐村河内守主演作品
だいぶ時間が経ったので、客観的に見られるかなと思いました。
なんかコロナ前の世界が懐かしいですね。
佐村河内さんは、人目をはばかるようにマスクをして外出しています。余計目立ちました、あの頃は。
今では、全く逆の状況です。
一方、変わったのは人間だけで、たとえばこの可愛いネコちゃんは変わらぬ視点を持っています。
おそらく森達也さんの狙いでもあるのでしょう。
そう、人間の二元論的な視点を、わざとひっくり返すのが森さんの常套手段。しかし、森さんもやはり人間です。そういう意図的な、すなわち「FAKE」な世界を優しく厳しい目で見るメタの視点を、この猫ちゃんに与えたのでしょう。
そういう「FAKE」なやり方が鼻につくという意味で、私は「森達也は腹立つわ」なんですが、それでもこれだけ好きだというのは、おそらく自分にもそういう「FAKE」なところが大いにあるからでしょうね。
だからこそ、「衝撃のラスト12分」は、まさに「笑撃」でした。
これはまさに「私レベル」の衝撃(笑撃)ですよ。あちゃ〜、です。森さんも残酷ですよね〜。
ただ、あの頃も思いましたが、他の分野ではこうしたゴーストライターや、「共作」という作業過程はよくあることですよね。なぜ音楽についてはこんなに厳しいのか。
私もずいぶんたくさんのゴーストライティングをしてきましたし、かの仲小路彰も皇族や軍人、そして総理大臣に至るまで、あまりに多くの「代筆」をしています。
また、逆にクライスラーが有名作曲家の名前を借りて作品を発表していたことも有名な話です。
結局、森さんがこの映画で表現したかったのは、マスコミとメディアと大衆の「いじめ」体質ということですね。彼らによる、インモラルな善悪二元論とバランスを取るには、このくらい極端に佐村河内さん寄りの表現をする必要があったのでしょう。
しかし、それがまた結果として、最後に笑いと呆れを催してしまうという残酷。私たちは、途中まで佐村河内さんにシンパシーを抱いていたのに、最後の12分で見事にまた彼を嘲笑する大衆にされてしまったわけですから。
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