能 『鷺』
番組は、能「半蔀」、狂言「蚊相撲」、能「鷺」でした。
圧巻はやはり「鷺」。これには泣きました。これは日本人なら全員観た方がよい。本気でそう思いました。
醍醐天皇に召され、五位を賜った鷺が舞うだけといえばそれだけの演目なのですが、そこに表現されたモノのすごさがすごすぎました(変な表現ですが)。
シテの鷺を舞うことができるのは、元服前の少年か還暦後の老人に限られます。そして面をつけない「直面(ひためん)」。
今回は、娘の師匠である人間国宝野村四郎先生がシテを務められました。御年85歳。
少年と老人しか舞うことができないのは、普通の大人では人間臭さ、世間臭さが出てしまうからです。こう舞おうという意志が出てしまうからです。
なにしろ、ここで表現されなければならないのは、「帝」の素晴らしさであって、鷺の美しさではないのです。
そういう意味で、野村先生の「鷺」は完璧でした。
そこに座して私たちと同じく鷺を観る立場にあられる「醍醐帝」と、客席の私たちが一体化する。さらに、「帝」に無条件に愛される鷺と私たち国民が一体化する。
そういう非常に重層的で多次元的な時空間が、見事に現出していました。そして、その帝と鷺と私の一体感、つまり帝に包まれる大御宝としての私の幸福感が涙につながったのです。
これほど自分が日本人であることの幸福を感じた瞬間はありませんでした。
それをこういう形で表現する能のすごさ。やはり能は見方というか、感じ方、参加の仕方で、その本質に触れることができるかが決まります。そして、そこに導くことができるかが、能役者の位を決めるのだと思いました。
少年が舞ったら、また違った感想だったことでしょう。少年ですと、こんな感じです。
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