『西洋音楽の正体〜調と和声の不思議を探る』 伊藤友計 (講談社選書メチエ)
最近の私はまさに「西洋音楽の正体」に迫ろうとしております。もちろん私はシロウト音楽家ですから、伊藤先生のようなアプローチとはちょっと違います。
さらに言うなら、シロウトならではの無責任さをもって、「西洋音楽こそが世界をダメにしている元凶である」という仮説に基づいての活動を進行させているのでした。
しかし、ご存知のとおり、私自身はモロに西洋音楽を愛好し、また演奏している者であります。そう、学校の先生でありながら「学校をぶっ壊す!」とか言っているのと同じ構図ですね。どうもそういう人らしい。私は(笑)。
で、具体的に何をやっているかというと、まずヴァイオリンに絹絃を張っています。これがなんで「西洋音楽をぶっ壊す」ことにつながるかというのは、またいつか結果が出始めたら報告します。
まあ、簡単に言えば、西洋音楽が切り捨てていった「モノ(何か)」を復権させようということです。
昨日までの「イノベーション」の話にもつながりますが、「もう戻れない」というイノベーションには、多分に洗脳的要素、麻薬的要素が存するものです。
たとえば、私たちの食生活や、交通手段や、通信手段などを考えればわかりますよね。もう戻れない。
そういう視点で、この世界に席捲し、ほとんど暴力的に我々を支配下に置いてしまった「西洋音楽」というヤツの正体を知りたいのです。そいつと戦うために。
音楽において、そんな洗脳的なイノベーションを起こしたのが、かのモンテヴェルディです。一言でいえば、「属七の和音」から主和音で終止する形を発明してしまった人です。「属七の和音」は私たち現代人にとっては、非常に指向性の強い慣れ親しんだ和音ですが、モンテヴェルディ以前には、「悪魔」と「塩」がまぶされた最悪な不協和音だったのです。
そこがこの本のキモ。実に面白いところであり、それこそ西洋音楽の正体の最もわかりやすい点(弱点)なのです。
そして、それは「自然」なのか「不自然(人為)」なのか。そのあたりの話が実に面白かった。
私も、もう生れた時から西洋音楽のシャワーを浴びていましたし、幼少期にヤマハ音楽教室に通ってしまったので、それこそ化学調味料のような属七の和音をずっと摂取しまくってきました。
その後ビートルズにはまり、洋楽ロックにどっぷり浸かる青春時代を送り、ジャズも聴くようになり、さらに複雑な和音を聴くようになりました。また、大学に入って、きれいな女の先輩たちにだまされて(笑)箏曲の同好会に入って邦楽も始めましたが、全くその価格調味料というか麻薬の呪縛から逃れることができていません。
しかし、この歳になって、いろいろ変化が現われてきました。まあ、家内が東北の山奥で民謡や労働歌や演歌にまみれて育って、いまだに属七の和音や長三和音に違和感を抱くような人だということもありますし、あとその血を引いた下の娘の影響もありますかね(長女は完全に西洋音楽派です)。
この春、その下の娘がどういうわけか東京芸大に合格してしまいました。急遽決まった受験に向けて、付け焼き刃で、たったの三日間(!)で「楽典」を教え込みました(逆に言えば三日で西洋音楽の骨組みはわかってしまうということです)。
実は芸大とはいっても、娘は邦楽科の能楽専攻ですから、それまで楽典なんてものがこの世にあることも知りませんでしたし、これからも楽典的な音楽理論を使う可能性はほとんど皆無です。
西洋音楽の殿堂で、西洋音楽とは全く違う音楽世界で勉強している。私もその世界にすっかり引き込まれてしまい、なにかそっちの方が(特に私たち日本人にとって)本当の音楽なのではないかと思うようになったのです。
というわけで、一方で五線譜の音楽を奏でつつ、一方で娘が学んでいるこんな楽譜にも興味津々の最近の私。
はたして理論ではなく、実践によって、この世界の洗脳を解くことができるのか。ちょっと楽しみにしていてください。
まずは、シルク絃を使うことによって西洋音楽が和声のために捨象してしまったモノ(何か)を復活させて、それを西洋音楽にまぶして演奏していこうと思っています。
あっ、オマケに一言。私は「長三和音」のルーツは「かっこう」の鳴き声だと真剣に考えています。ついでに言えば「短三和音」も、下手な「かっこう」ですよ(笑)。
Amazon 西洋音楽の正体
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