「うぐいす」の語源
富士山麓はウグイスが盛んに鳴く季節となりました。いわゆる街場での「初音」の季節とは違い、かなり鳴き方もうまくなっており、いよいよ繁殖期の本番という雰囲気であります。
ホーホケキョ(宝法華経)のあとの「ケキョケキョケキョ…」はライバルを威嚇する鳴き声。富士山麓ではその「華経」の部分もたくさん聴かれます。まさに実戦モードですね。
ちなみに「鳴き方がうまくなる」というのは、実際そうでして、先輩たちの鳴き方を真似しているうちに上手になっていくという「口伝」「稽古」のシステムがあるのです。
ですから、ハワイに持ち込まれたうぐいすはホーホケキョとは鳴かないとのこと。いわば方言的にだいぶ簡略化されているそうです。
そういえば、こんな話もありました。次女が今、上野の寛永寺のすぐそばに住んでいるのですが、ある時、お寺の偉い関係者が「上野の森のうぐいすは訛っていていかん」と、京都から大量のうぐいすを運びこませたそうで、それ以来京風な「正しい」鳴き声になったと。
それで、あのあたりを「鶯谷」と呼ぶのだそうです。面白いですね。
さて、ホーホケキョが宝法華経であることは、まあ分かるわけですが、では「うぐいす」という名前はどこから来たものでしょうか。
実はこれも鳴き声から来たという説があるのです。そして、私はそれを支持しています。
古い表記では「うくひす」です。そして、古い発音を現代風に書けば「ウクィピチュ」となります。つまり、うぐいすの鳴き声を「ウ〜クィピチュ」と昔の人は聞いたのではないかということです。ちょっと声に出してやってみてください。けっこうリアルですよ。ホーホケキョよりも。
「はひふへほ」の発音の変化は非常に複雑なのですが、一番古いところではP音であったことがわかっています。
ですから、たとえば鳥で言うのなら、「ひよこ」は「ピヨピヨ」鳴くので「ピヨコ」ですし、おそらく「ひな」も「ピーピー」鳴くところから「ピナ」であったと思います。
また、サ行は「チャチィチュチェチョ」だったこともわかっていますので、たとえば「すずめ」は「チュンチュン」鳴くところからついた名前だと言えます。
このように鳴き声がそのまま名前になることは、「かっこう」の例などを考えても普通なことであったことがわかりますね。
ちなみに、繁殖期以外のうぐいすや、うぐいすの子供のことを「ささご(笹子)」と呼ぶのですが、それは藪の中で「チャッチャッ」と鳴くからだと思われます。「ちゃちゃご」ということですね。山梨県の笹子峠、笹子トンネル、笹子駅の「笹子」はこれです。
それにしても、これほどメジャーな鳴き方をする鶯ですが、基本日本にしかいないんですよね。朝鮮半島や満州にも分布していますが、やはり鳴き方が違うそうです。
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