Keith Jarrett 『All The Things You Are』(楽譜付き)
昨日「鬼」(モノ)の話をしました。これもまさに「モノ」ですよ。どうなっているのか全くわからない世界。
キース・ジャレットのインプロヴィゼーション(即興演奏)の世界、こうして音になり、そして楽譜にしてくれて目に見えるようにしてくれているわけですが、それで「分かる」すなわち「コト」になるかというと逆でして、余計にわからなくなる。信じられなくなる。
こういうインプロヴィゼーションというのは、もちろん過去の「コト」(記憶)の蓄積でもあるわけですが、そこからこうして生命ように、今までなかった世界が生れるわけですから、まさに「生きモノ」です。
本当にキース・ジャレットの演奏を聴く(感じる)と、人間ってすごいなあ、神に限りなく近づける存在なんだなあと思います。
ブートレグなので、この演奏、初めて聴きました。トリオでのこの曲の名演は多数ありますが、このソロ・パフォーマンスもまた格別に素晴らしいですね。
「ケルン・コンサート」もそうですが、いくら精確にトランスクリプションしても、そしてそれを精確に演奏しても、インプロヴィゼーションの生命力は生まれないんですよね。それこそコトとモノの違いです。
古い日本語では、音楽のことを「もののね」と呼びました。おそらくほとんどが即興演奏だったのでしょう。
そう考えると、即興を認めない楽譜(コト)の再生という構造を造った、西洋近代音楽の演奏の方がずっと難しいとも言えます。なにしろ、既存の曲(コト)を、今まさに生まれたかのごとく(モノのように)演奏しなければならないからです。
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