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2021.03.31

ホモ・パティエンス(悩める人)

Th_utslppsfritt-energisystem_till-press_ 境問題はエネルギー問題であり、それが実は戦争のない平和な世界への基礎課題であることは、皆さんもよく理解されていることと思います。

 それは昨日紹介した鈴木孝夫先生も常に強調していたところであります。

 今日、こんな記事を読みました。

太陽エネルギーを18年間保存できる液体が開発される 常温で保存可能で繰り返し使える

 たとえばこの「太陽エネルギー・ストレージ」など、どう評価すればよいのか。

 なるほど、たしかに北欧の人たちにとっての太陽エネルギーを備蓄することは夢のような話ですよね。

 それは一見、素晴らしいことのようでありますが、あくまでもこれは人間の「快適への欲望」、すなわち分かりやすく言えば、たとえば私が夏のクソ暑い日に、この暑さをあの厳寒期に持っていければなあとか、反対に寒い時にその冷気を夏の昼間に使えればなあとか、快適な春や秋の季節に一年中この陽気だったらいいのになあとかいう妄想の実現のためのテクノロジーだということを忘れてはいけません。

 私たち人類の生活は快適になりますが、はたしてそうして局所的であれ四季をなくすようなことが、人類以外の生物、あるいは地球全体にとっていいことなのか、それは常に意識しなければならないでしょう。

 私もここ20年くらい、エネルギー問題解決のために、核融合発電と大型キャパシタによる蓄電ということをずっと考えてきましたし、実際科学者や技術者の方々と現実的な討論をしてきました。

 しかし最近、ちょっと違うかなとも思い始めているのです。いくら再生可能エネルギーであったり、ゼロ・エミッションであっても、やはり地球環境に人為をほどこすことには変わりないのであって、根本的なところで「環境に優しくない」のかもしれないと。

 究極的には、ホモ・サピエンス、いや鈴木孝夫大明神のいうところの「ホモ・スチュピド・サピエンス(愚かにも賢くもなりうる人)」がいなくなることが最も環境に優しいのではないか。SDGsとかその「人」は叫んでいますが、お前にそんなこと言われる筋合いはないよと地球は思っているかもしれない。

 もちろん、では欲望のままに突き進んで勝手に滅亡すればよいのかというと、やはりそういうことではありませんよね。なぜなら、そのプロセスの中に巻き込まれて迷惑を被る存在があまりに多いからです。

 だからこそ、私たちは悩める人…「悩める」とは「悩んでいる」と「悩むことができる(悩むことに耐えられる)」というダブル・ミーニングです…ホモ・パティエンスでなければならないのかもしれません。

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