« 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品 | トップページ | 『ゲンロン戦記ー「知の観客」をつくる』 東浩紀 (中公新書ラクレ) »

2021.02.28

『曼荼羅』 石堂淑朗 脚本・実相寺昭雄 監督・冬木透 音楽作品

Th_91gawykqf7l_sx300_ 日の「波の盆」が、実相寺らしくない(常識的な)作品だとすれば、このATG映画「曼荼羅」は、めちゃくちゃ実相寺らしい(過激な)作品だと言えましょう。

 ちょうど50年前の作品ですか。作品の最後にもちらっと示唆されていますが、三島由紀夫の自決の余韻、すなわち左も右も行き詰まったあとの学生の行き場のなさ、虚無感を見事に映像化していると思います。

 時間は観念であり実在ではない…随所に聞かれる時間論も面白いですね。

 こちらで全編観ることができますが、いきなり濡れ場ですので音量にはご注意を(笑)。

 虚無感の行き先が原始共産制であったり、エロチシズムであったり、カルト宗教であったり。ソフトになったとはいえ、半世紀経った今も、その行き場のなさは続いています。

 ソフトになったというか、私たちはそこから目をそらすようになってしまったのですね。ごまかしている。私の世代はそういうごまかし世代のトップランナーです。

 ですから、諸先輩たちの魂の格闘の跡である、このような作品を直視するのはいいことだと思いますよ。退屈だとか、つまらない、わからないと言わないで。

 石堂淑朗とは全くタイプは違いますが、昨日の倉本聰もちゃんと格闘していますよね。

 さて、私がこの映画が好きな理由の一つに「音楽」が挙げられます。これもまた昨日の武満徹とはタイプは違いますが、冬木透の音楽がいいのですよ。全編にわたってパイプオルガンのみ。

 それが無調性な感じから、最後バロック期のコラール前奏曲のような調性感という意味を持つことになり、そして「死」「敗北」に至る。それをまとめてくれた動画がありましたので(マニアックだ!)、とりあえず映画は見ずとも、これを聴いてみてください。

 冬木さん、ウルトラセブンの音楽のイメージが強いけれど、学生時代は教会オルガニストのアルバイトしていたんですね!その時の経験が活かされた見事なオルガン音楽です。

 

|

« 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品 | トップページ | 『ゲンロン戦記ー「知の観客」をつくる』 東浩紀 (中公新書ラクレ) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

歴史・宗教」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品 | トップページ | 『ゲンロン戦記ー「知の観客」をつくる』 東浩紀 (中公新書ラクレ) »