ヴィヴァルディ? 『チェロ協奏曲ト長調 RV 415』
先日、本家を超える(?)偽ヴィヴァルディ、いや失礼ネオ・ヴィヴァルディを紹介しました。
今日は最近偽作と認定されてしまった伝ヴィヴァルディの名曲を紹介しましょう。
チェロ協奏曲ト長調。かつてはRV415と分類されていたのですが、今ではAnh(おまけ)に追いやられてしまっています。
私がこの名曲を知ったのは、それこそ偽合奏団の演奏でした。
さすが幽霊とあって、記事に貼った動画が全て亡霊と化していますね(笑)。
幽霊演奏家の演奏動画が他にもありましたので、まずそれで聴いてみましょうか。
たしかに1楽章の冒頭のユニゾンからしてヴィヴァルディらしくないというか、バロックというより新古典の風味があります。しかし、天才ヴィヴァルディには、そのような先取的を作品もありますし、ソロパートの語法などはヴィヴァルディ的でもあります。
で、最近は偽作と認定、つまりヴィヴァルディの作品ではないと認定され、では誰の作品なのかという、よく分からない。ただ、その当時のネオ・ヴィヴァルディとして作られたことは確かです。2楽章のシチリアーノは完全にバロックの洋式ですし。
そして、なんと言っても圧倒的にカッコいいのが3楽章。昨日の実相寺昭雄ドラマでも「協奏曲のフーガ楽章」が使われていましたが、そうしたフーガ風楽章の中でも特に秀逸なのがこの曲のこの楽章。
ちょっと抜き出して聴いてみましょうか。最近聴いたスマートな演奏です。ピーター・ウィスペルウェイのチェロ・ソロ。
こんなカッコいいフーガ楽章を書いたのはいったい誰なのでしょう。テーマの時点で勝ちですね、この曲は。単純な話ですが、属音から始まるテーマなので、出だしを「食う」ことができる。カデンツの段階で次のテーマを始められる。その抜き差しの感じが絶妙です。
一説では作曲者はプラッティとも。プラッティはヴィヴァルディより20歳ほど若い作曲家。世代的にはまさにヴィヴァルディアンだったことでしょう。
ヴィヴァルディは「同じ協奏曲を数百回書き直しただけ」などと揶揄されることもあり、私も大学生の時なんかは、まさに若気の至りで、ヴィヴァルディと小室哲哉は全部同じ曲に聞こえるとか、ワンパターンすぎるとか、金太郎飴とか酷評していました(笑)。今は全く逆の評価をしております、二人とも。
二人ともにすごいのは、それまで全くなかった音楽を作り出し、それが実際に庶民に受け入れられ、要望されてそのオリジナルなスタイルでたくさん曲を書いたということです。ですから、リアルタイムでは大ヒット連続だし、それが飽きられた未来の立場から見ると全部同じなどと乱暴に片付けられてしまうわけですね。
そんなこと言ったら、いまだに「能(謡曲)」なんか全部同じに聞こえて眠くなる(笑)。私の方がまだまだだという話なんですよね。
実際、ヴィヴァルディも小室もフォロワーがたくさんいました。バッハだってその一人です。おそらくプラッティも偉大なる大先輩のマネをしてみたかったのです。
ついでですから、プラッティという作曲家の真作チェロ協奏曲のフーガ楽章を聴いてみましょう。かっこいいですよ。
プラッティはコレルリアンでもあったようで、大大先輩コレルリのヴァイオリン・ソナタ作品3を合奏協奏曲に編曲したりもしています。また、当時の最新楽器であるクリストフォリのフォルテピアノのためにも曲を書いているとか。まだまだ知らない作曲家がたくさんいますね。
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