ネオ・ヴィヴァルディ(!!)
first recording とあるので、えっ?新曲が見つかったのか?と思い聴いてみました。
たしかに聴いたことがあるようなないような曲ばかりです。そして、非常にいい曲が多い。さらにオリジナル楽器による(と思ったらなっちゃってだった!)素晴らしい演奏。
しかし、なんか違和感というか、妙な「新しさ」を感じる…と思ってよく調べてみたら、なんとこの曲たち、新曲ではなく旧曲のヴァージョン違いというか、新編曲版だったのですね!そりゃ、first recording になるわな。
なるほど、これは大河ドラマのような感じで楽しめばいいのか。史実と違う!とか野暮なことは言わないで、その微妙なフィクションを楽しめばいいと。
回りくどく言わないでずばり言いますと、これらの曲にはヴィヴァルディの元曲がありまして、それを「勝手に」現代のヴィヴァルディ・マニアの人が編曲(ほとんど作曲)してしまったということなのです。すげ〜なあ。さすがイタリア人。
というか、編曲(作曲)した(しちゃった)のはスペインの音楽学者(にしてヴィヴァルディ・マニア)であるパブロ・ケイポ・デ・リャノ氏。1971年生まれだから50歳くらいか。
う〜ん、やはりラテン系は違うなあ。これってクラシック界では基本ダメなヤツでしょう。もちろん、楽器編成を変えたりして、その結果音を加えたり減らしたりというのはよくありますが、全体に曲想すら変えてしまうというのは珍しい。
かと言ってパロディでもない。だいたいジャケットには「8 Concerti Solenni(8つの荘厳な協奏曲)」としか書かれていないし、とにかく「first recording」って書いちゃってるわけですから、詐欺と言われてもしかたないかもしれません。
ついでに言えば、このアルバムは、Brilliant Classics の66枚組ヴィヴァルディ・エディションの30枚目にさりげなく入っているのです!最後ならともかく、途中の、それも協奏曲のCD群の途中に収まっているのだから、すごい(笑)。全集に偽物(それも最近作られたもの)が混入しているという…。
いや、私はそれを非難しているのではありません。私としてはカッコよく美しければそれで良いのです。実際元曲より、つまりオリジナルのヴィヴァルディよりも、ネオ・ヴィヴァルディの方が良かったりするので。
こういうのってポピュラー音楽では普通にあるじゃないですか。クラシックの世界でもこういう「カバー」…ちょっと違うか…換骨奪胎みたいな楽しみ方が流行ってくれると面白いのでは。
それから、たとえばバロックの様式に従って全く新しい曲を作るなど、本当の意味での「ネオ」が生まれてきてもいいのではないでしょうか(リャノはそれもたくさんやってます)。
では、最後に、リャノがどれだけうまいこと編曲しているか(やりたい放題やってるか)、実際にオリジナルと比べて聴いてみましょう。
RV 247。協奏曲ニ短調。原曲はソロ・ヴァイオリンのための協奏曲。それを2本のヴァイオリンのための協奏曲に仕上げちゃってる。1楽章や2楽章は完全に「新曲」。原型がありません。つまり、3楽章のフーガの、あの変なテーマだけを利用していて、あとは完全に「ヴィヴァルディが現代まで生きていたら」的な曲を作ってしまったのです。
ここまで堂々とやってしまうと、もうすごいとしか言いようがありません。めちゃくちゃいい曲だし。いい演奏だし。どっちがお好きですか。現代人のあなたは。
ちなみに原曲の楽譜はこちらです。原曲もたとえば188小節の1拍目の和音、これでいいんでしょうかね?間違っているように聞こえます。
原曲
編曲(ほとんど新曲)
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