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2021.02.02

山本邦山のテイク・ファイヴ

 

 日は、能楽の人間国宝、野村四郎先生に久しぶりにお会いしました。いろいろと勉強になるお話をいただきましたが、中でも尺八の人間国宝、山本邦山さんのエピソードは興味深かった。山本邦山さん、一昨日紹介した宮城道雄の番組にも出演し「らしい」発言をされていましたね。

 山本邦山さんは、まさに邦楽の壁を突き抜けて様々な活動をされた方であり、そういう意味でも四郎先生にとっては同世代の「盟友」であったようです。

 四郎先生曰く、邦山さんの尺八は「打楽器」であると。これには大きくうなずかされました。

 もともと日本の弦楽器や管楽器は、自然に打楽器的な要素を持っています。三味線がわかりやすい例でしょうかね。旋律楽器でありリズム楽器であるという。

 この動画でのジャズ演奏においても、その打楽器的要素が鮮明です。尺八も独特のアタックを重視する楽器です。

 コメント欄にもあるように、ブルーコーツの西洋楽器と邦山さんの尺八の対照が面白いですね。西洋楽器は近代的な工業製品であり、無数の部品からなっていますが、尺八は基本的に竹に穴を開けただけ。

 西洋楽器は基本ノイズを除去する方向で発達しています。一方、尺八のみならず多くの民族楽器はノイズこそが命であったりするわけで、それこそ打楽器的なアタックを生む要因となっているわけです。

 考えてみれば、ジャズという音楽ジャンル自体、民族的なモノが近代西洋的なコトを飲み込んで行く性質のものでしたよね。歌も楽器も和声もリズムも、あえて「ノイズ」を表現する方向に進化していった。

 ですから、尺八のジャズは、私たち日本人が考えるよりもずっと自然に外国人には受け入れられるでしょうね。実にクールなのではないでしょうか。

 それから、今日の四郎先生のお話の中に、「シンプルなモノほど深い」というようなことがありました。やたらに音符を増やして名人芸的にやるのではなく、一音一音に魂をこめると、結果としてシンプルになっていく。

 そういう意味でも、この邦山先生の演奏は、決してやり過ぎにはならない、深いシンプルさを持っていると感じます。

 それにしても、人間国宝から人間国宝のエピソードを直接聞けるなんて、なんと幸せなことでしょう。感謝しかありません。何かの形で、私なりに芸術界に還元していきたいと思います。

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