『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品
古いけれどいつまでも新しいお話の続きです。
先日紹介した「レモンのような女〜私は私」を監督した実相寺昭雄の遺した超名作テレビドラマ「波の盆」です。
1983年(昭和58年)の秋に放送され、のちに文化庁芸術祭大賞やテレビ大賞優秀番組賞を受賞することになりました。
実相寺にとっては1964年以来約20年ぶりのテレビドラマ。円谷プロのウルトラシリーズなどから、ATGのアヴァンギャルドな映画、テレビの音楽番組などの演出を手掛けてきた実相寺は、当時急速に発達したビデオカメラに興味を持ったようです。
常に新しいことに挑戦しつつ、自己の中には明らかな「実相寺調」を確立していた中、この作品は新しさとこだわりが絶妙なバランスを見せてくれています。
多くの「一般人」が見るであろう日本テレビの単発ドラマということもあり、また脚本が倉本聰であったり、音楽が武満徹だったこともあってか、いつものぶっ飛びが微妙に抑制され、まさに「ちょうどいい感じ」に仕上がっています。それが高評価につながったのでしょうね。
テーマは太平洋戦争によって日本とアメリカに分断されてしまったハワイの家族の物語。倉本聰らしいヒューマニティあふれる素晴らしい脚本。ある意味では当時の実相寺らしくない脚本です。
笠智衆の俳優人生においても、代表作と言っていいものです。こういうレベルのドラマがなくなったのはいつ頃からでしょうねえ。
そして、これを忘れてはいけません。武満徹の音楽。これもまた武満の代表作の一つとなりました。
動画のコメントにもありますが、指揮者の岩城宏之があまりの美しさに指揮しながら泣いてしまったと。そして、コンサートマスターのヴァイオリニストもまた泣きながら演奏していそうです。たしかに美しすぎる…。
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