『細川ガラシャ キリシタン史料から見た生涯』 安廷苑 (中公新書)
昨日に続き、細川ガラシャのお話を。
この本は学術書の類に入ると思いますが、とても興味深く読みました。もちろん、ガラシャの人生があまりに波乱万丈なので、こうしてまじめに(?)それをなぞるだけでも、大変面白くなりますし、学問的だからこその疑問点も出てきて、ある種のミステリーとして読めますね。
写真の帯にあるようよ、「彼女の死は、自殺か、殉教か」を考えるだけでもエキサイティングです。彼女の死(他人に殺させたと思われる)は、武士の論理の上にあるのか、それともキリスト教の論理の上にあるのか。あるいは、それらを両立しているのか、いや、どちらでもないのか。その答えは…。
いずれにせよ、昨日書いたように、彼女の魂には父光秀の魂が乗り移っていたのは間違いなさそうです(もちろん学問的にはそんなことは証明できませんが)。
私ももう一つの興味の方面から言いますと、バロック期に細川ガラシャを主人公としたオペラが作曲され、演奏されていることは見逃せません。
ヨハン・ベルンハルト・シュタウト作曲が1698年にオーストリアのハプスブルグ家のために作曲したのが、バロック・オペラ「気丈な貴婦人グラティア」(正式名称は「丹後国王の妃であった気丈な貴婦人グラティア、キリストのために贖った苦しみによってその名を高めた」)。
そう、以前、有馬晴信に関するバロック・オペラについて、こちらに少し書きました。日本とヨーロッパが、鎖国時代にこうしてつながっていたのは実に興味深い。
どうしても向こうからの渡来や影響に興味が行きがちですが、その逆もあったのです。そして、それがジャポニスムの大きな流れにつながっていく。
日本古楽史研究会の皆さんと、鎖国時代の出島での西洋音楽について話したのですが、こうして逆に日本からヨーロッパに文化が輸出されていたのです。もしかすると楽器も渡っていたかもしれない。音楽は、基本楽譜がなかった時代ですから伝わらなかったと思いますが。
2013年でしたか、イエズス会創設の上智大学で、このオペラの抜粋版が上演されました。そこには細川家当主、細川護熙元総理もいらしたとか。はたして当主にはガラシャの、すなわち明智光秀の魂は継承されているのでしょうか?まあ、陶芸家、茶人としては伝統を継いでいらっしゃいますが。
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