『ネオ・バロック〜融け合う時空』 三橋桜子(チェンバロ)
昨日、ネオ・バロックもありという話を書きましたが、ネオ・バロック音楽と言えば、このアルバムを忘れてはいけません。
チェンバリスト三橋桜子さんとご主人のパブロ・エスカンデさんの共同作品。パブロ・エスカンデさんはアルゼンチン出身の鍵盤奏者であり作曲家。
まず「ネオ」なのが、バッハの未完作品を完結させていること。私も大好きな、ある意味バッハらしくない情熱を感じる「ファンタジアハ短調」に付随した未完のフーガを見事にバッハ的な作風で完結させています。
バッハの未完フーガというと、最後(最期)の作品となった「フーガの技法」の最終フーガが有名で、それもいろいろな人が「完結」させています。
そうした試みは、故人の未完の小説を他人が勝手に補筆して完結させてしまうようなもので、ある意味では許されないことにもなりましょうが、一方で誰もが興味を持つものでもあり、また誰もがそうした行為の権利を持っているとも言えます。
問題はそのクオリティー。不敬になるのかトリビュートになるのかの境です。
そういう意味で、パブロ・エスカンデさんの「補筆」は非常によくできていると感じました。私、この未完のフーガがどこまで書かれているか知らないで聴いたのですが、正直「ここから補筆だな」と思った所は間違っていました(苦笑)。
それほどパブロ・エスカンデさんの補筆が上手いというのもありますが、バッハが彼のフーガにしては珍しく非常に挑戦的というか厳格な型を破っていることにその原因があったのです。
皆さんもぜひ「ここから」クイズを試したのちに、未完のスコアをご覧ください。たぶん間違えます(笑)。
先ほど、幻想曲が情熱的と書きましたが、それはラテン的と言い換えてもいいかもしれません。もともとバロック音楽と南米ラテン音楽の相性はいい。ヴィラ・ロボスやアストル・ピアソラの例を挙げるまでもありませんね。
バッハに続く、パブロ・エスカンデさんのオリジナル作品がまた良いのです。チェンバロとラテン音楽(風味)って合いますね。
最近、戦前の日本古楽史を研究している友人たちと交流して、いろいろ驚愕の事実が分かってきているのですが、南米なんかも日本以上にキリシタンがヨーロッパ音楽や楽器をもたらしていたでしょうから、チェンバロでラテン音楽が演奏されたり、いろいろ面白かったに違いありません。
昨日のネオ・ヴィヴァルディもそうですが、ただただ純粋なオリジナルだけを追い求めるのではなく、時空を超えたコラボ、フュージョンというのが実は面白いのかもしれません。オリジナルには限りがありますが、融合の組み合わせは無限ですからね。
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