田中緒琴(初代・二代)の八雲琴演奏
軽野曲(初代)
秋風曲(初代・二代)
昨日の野村四郎先生のお話の一つ。
「神に奉納する音楽はシンプル」
なるほど。
山本邦山先生や宮城道雄先生は、西洋音楽の影響を受け、西洋音楽並みの「手」を尽くす演奏もできますが、もちろん日本古来の「シンプル」な演奏もできました。
たしかに能もそうですけれども、一番大切なところは「何もしない」というシンプルの極みの表現(にもなっていない)を用いますね。
神事、そしてシンプルといえば、やはり八雲琴でしょう。たった2本の弦(天地を表す…それも2本とも同音に調律します)で、一音一音魂を込めて響かせ、天地の融和、神人合一を誘います。
私も八雲琴を演奏しますが、不思議と箏の時とは違う気持ちになるんですよね。楽器を演奏しているという感じではない。たしかに神降ろしの感覚がある。
もともと「コト」という言葉自体、モノ・コトの「コト」であり、モノ世界から私たちが知覚できる情報としてのコトを降ろす道具という意味でした。古語で、音楽のことを「もののね」と言いました。そう、「モノ」の波動が「音(ね)」になって、私たちが認知できるコトになるわけです。
それにしても、この録音は貴重ですね。初代田中緒琴は出口王仁三郎に重用された八雲琴の宗家です。大本と八雲琴、田中緒琴との関係はこちらをお読みください。
西洋音楽では、バッハの音楽に代表されるように、ある意味「手」を極めて神の世界に近づこうとします。それはそれで私も大好きな世界なのですが、実際に神と近づいた感覚になれるかというと実はそうでもない。どちらかというと、人間のすごさを感じてしまいます。まあ、そんな人間をお創りになった神はすごいということになるのでしょうが。
数学的な音の構築自体に神を見る、聞くという考え方も分からないではありません。御神事での八雲琴を聞くと、複雑な数式ではなく、本当に純粋な整数の世界、もっと言えば素数の世界のようにも感じられます。
シンプルに見える素数が、いまだ人間にとって謎な存在なように、八雲琴の糸の振動は説明不可能な深淵な「モノ(何か)」を実感させます。
面白いですね。私も両タイプの音楽を並行してやっていますが、それでいいのかもしれません。ぐるっと回って同じところに到達するのかもしれませんし。
今となってはかなり恥ずかしいのですが、2014年に北口本宮冨士浅間神社の開山祭にて、奉納演奏をさせていただきました。能楽囃子方、重要無形文化財総合認定保持者である大倉正之助さんの大鼓と、世界的なミュージシャン瀬戸隆介さんの薩摩琵琶と、ワタクシの八雲琴による即興演奏です。
なんの申し合わせもなく(大倉さんとは30分前に初対面)いきなりの即興奉納でしたが、まさに神のご加護のおかげさまでしょうか、不思議と自然に「合う」ものなのですね。素晴らしい体験をさせていただきました。
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