『放浪記』 成瀬巳喜男監督作品
昨日紹介した本の中で、宝田明さんが一つのターニングポイントになった映画として挙げてる本作。
四半世紀ぶりに鑑賞しました。
なるほど、それまでの宝田明さんのイメージとは違う「イヤな男」「ダメな男」を演じていて新鮮ですね。
本にあった高峰秀子さん演ずる林芙美子との無言のシーン。ここだと特定はできませんでしたが、次第に男の嫉妬心から二人の関係が冷めていく様子を見事に演じていますよね。
そして、そんな宝田明さんを、ある意味手荒な方法で導き出した高峰秀子さんの上手さたるや。女のしたたかさ、バカさ、可愛さを見事に演じていますね。
それぞれの女の生き様を通じて、女の幸せとはを問い、さらにそこに男性の不幸や社会の矛盾を照応させて表現する成瀬巳喜男監督の真骨頂。
作為なき画作りが、これほどに説得力を持つのか。今の若い表現者たちにぜひ観てもらいたいですね。
それにしても、まあいつの時代も女は強いですね(笑)。男尊女卑とか言われる時代ではありましたが、誤解を恐れず言えば、そういう社会構造でちょうどいいくらい男は弱い生き物なのでした。
そう考えると、今の世の中はどうなのか。林芙美子が最終的にああやって男性に伍して活躍しても、なんとなく不幸せそうに見えるのはなんででしょうね。
そして、いつの時代も加東大介演ずる安岡のような「いい男」が損をするのか。いや、得をしたとも言えるのかもしれない…などと、いろいろ思いを巡らせて鑑賞した2時間でありました。名作。
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